2015年04月18日

ライド通勤

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今年は、年度始め早々に自転車で通勤出来るという幸せ!
というか3月末から出来てた。早い、すっごい寒いけど、、

路面がまだイレギュラーなので、今のところ通勤にはMTBで。
今年15年目のGTもまだ行けそう。
先週、雪解け後に路側帯に溜まった滑り止め用の砂利の清掃をしていたから
そろそろロードでも行けるかな?
憧れのあれに向けて、脚と身体もしっかりと作らなきゃだ。

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2015年04月17日

Freunde kamen aus Deutschland.

3月の末にドイツから友人達が遊びに来てくれた。

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Lisaは、2010年、真紀がコンペインしたオーバーハウゼン国際短編映画祭のスタッフをしていて、その時仲良くなった、ドイツ滞在中にBerlinへ行った時にもとても親切にしてくれた。彼女が札幌に来るのは2度目で、今回はアジア周遊の終点日本の最初の滞在地として訪れた。現代美術や映画が好きで、ぼくらの作品の良き理解者でもある。世界中の色んなものを見て来た価値観で受け取ってくれるのがありがたい。今回もそれぞれの新作をプライベート上映で熱心に見てくれた。そして、宿泊のお礼にと、ドイツ南部式のSchnitzelを作ってくれた。調理の最中の匂いからしてドイツを思い出す…、味も最高!

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Altanは、ケルンに住んでいた家の近所で馴染みになった優しい肉屋の息子でフリーランスのwebプログラマー。友人のFrederikと一緒に来た。ここのお肉屋さんは、本当に美味しくってよく通った。しかもぼくらの辿々しいドイツ語の買い物に優しく付き合ってくれて、それに甘えて定期的に(密かな)語学練習にさせてもらっていた(笑)。
そのお父さんが日本語が出来る自慢の息子としてぼくらに紹介してくれて仲良くなった。
実はこの肉屋のお父さんはトルコ料理のレストランも経営していて、かなり美味しい。ケルンで食べた外食ではダントツに1番で、ここでトルコ料理が好きになったし、無論肉が本当に美味しい。
ケルンに行くことがあれば超おススメ!しかもお父さん、かなりやり手の実業家で、ケルンに新たなケバブのレストランを開いて、更にロンドンにも出店予定だそうだ。スゴイ。

3人とも日本語がとても上手で尊敬する。こちらのドイツ語の出る幕は無い、、というかそもそも全然上達していない。特にAltanとFrederikは日本に来たことがなかったのに相当上手いし漢字もかなり読めるのに驚かされる。在独の日本人とよく会話しているのと、日本のアニメ、漫画、ドラマを見て覚えるんだって。
うーん、ぼくらがドイツの映画を見てもなかなかそうは行かない気がするのだが…
まぁ地道にやるしかないのか、、英語すらまだまだ全然だし、、

ドイツの若い人たちも、どうやら日本の現状に色んな意味で興味を持っている様で、ドライブや温泉につかっている間に不意にクエッションを投げかけて来た。3人とも日本人の性格や振る舞いもよく理解しているので、日本的「ザ・空気を読む」も語学同様にマスターしている。なので一方的な感じではなくしかも絶妙なタイミングで問いかける(スゴイ)。聞きたいんだなぁやっぱり、そしてそれを問われることに対してぼくも全く戸惑いや疑問はなかった。

日本のことがとても好きと言ってくれるのだけど、海外から良い所も悪い所も冷静に受け止めた上で、個人的にそれぞれ好きな所を見出して、現地で体感しようって視点や意識はとても素晴らしいことだよなぁと思う。その為に勉強もしっかりしているし。
その意識が少し薄れかけていたので、とても良い刺激になった。再会ってそういうパワーもあるんだなぁ。


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あ、何も考えずに、無条件に好きってのもある、それはそれで良いよね。


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2015年03月27日

福岡、広島

軽めのリサーチもかねて福岡と広島へ、どちらも初めて行きました。

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短い滞在なので、表面的にメジャーなところのみ。
福岡国立博物館はかなり良かった。装飾古墳の資料がとても勉強になった。

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そして広島へ、こちらもメジャー観光のみだけれど、新作のためにやはり見といて良かった、来といて良かった。
街中を歩くだけでもとりとめも無く色々と考えてしまう。結構センシティブに。

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ノーチェックだったけれど、丁度企画展がスタートしていた。
漫画原稿、千円札裁判の記録、クラシックカメラのデッサン、現物にお目にかかれて良かった。
平行開催のコレクション展「記憶というカタチ」もビデオアート、映像系の国内作家の所蔵が堅実だった。

福岡、広島どちらも北海道とは全然違ってかなり異文化、国際的でアジアを感じた。
そしてご飯は最高に美味しかった、次回はしっかりとディープに行きたい。出来れば仕事で来たいな。

帰りに東京へよりこちらも初めてVOCA展も見てきた。
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2015年03月24日

フィルムbyフィルム

新アトリエもようやく軌道に乗り出した。
普通の小さなワンルームだけれど、部屋の形がシンプルな分、今のところ作業の流れが上手くレイアウト出来てる。

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フィルム by フィルムの制作はまだ続けられそうなので、ここでまた暫く実験をして行くことになる。
目標はフィルムフォーマットの上映作品での映画祭入選だけれども、
それだけに限らずblending フィルム and デジタルも無論進めて行く。

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まぁ、とにかくダークルームはとても楽しいね!
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2015年03月23日

イメージメモ

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2015年02月16日

mit Kounosuke

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トーク結構良かった。(幸之助の合いの手付き・笑)
3.22(sun)まで
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/knb/exhibition/sp_20150322.htm
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2015年02月15日

川より東側

ゴーゴーの強風だったけれど、作業帰りにフォト徒歩。
新アトリエ周辺の札幌イーストがすこぶる良い感じ(期間限定!)

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色々きれいに開発されきるまでの雰囲気は楽しめそう。
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2014年11月30日

mit Kounosuke

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2014年11月26日

momoe

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ここ最近のヘービーローテなんだけども、良すぎる。
特にオープニングの「マホガニー・モーニング」
超ロングのイントロの後の情景描写が何とも映像的で好きです。
もう暫くはハマるなぁ
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2014年11月16日

atta出ました〜

今月、美術家・武田浩志、樫見菜々子とのアーティストスタジオatta(アッタ)を出ることになりました。
理由は色々とあるのですが、ぼくと武田くんの長年の確執、不仲が大きな原因です、、、

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いや、ウソウソ(笑)

ぼくの作業とatta環境の折り合いがつかずで、止むを得ずの決断というのが本当のところです。
ドイツから帰国しての2年くらいは、まともに作業ができなかったので、、
ぼくは新たな作業場所に移って、attaは今後、武田&樫見とギャラリーsalon cojicaさんが使うことになりました。

今年でattaは7年目、結構長いことやってます。
特に始めて3年くらいは、サロン的に結構色んなパーティーをしました。
毎回沢山の人に来てもらえて楽しかった!

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オープニングの日程決めてからも工事が終わらず、徹夜作業のこともあった。
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ボツキャラ(笑)デザインやら作り込みが無駄に(いやいや必要)好きだから、こういうのも色々考えた。
参)http://attatta.com


契約してすぐに、ボロボロの内装を全て自分たちで改造して、約3ヶ月間みっちり工事してたなぁ、、、
とても懐かしい。

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こんなに自由に好き勝手に出来たのも、ぼくらの活動や札幌のアートシーンへの深い理解と好奇心を持って面倒を見てくださった、atta斜め向かえの不動産屋さん、西村さんのおかげです。
西村さんは、時々覗きにきてくれたり、近所の吞み屋さんに呼んでくれたり、不意に祭太郎のTシャツを着ていたりと、とても親しみ易いチャーミングなおじいちゃんだった。
ぼくがドイツ滞在中の2013年新年に訃報を聞き、とても悲しかった。
写真は2008年3月末、西村さんの事務所での契約の時のもの。この後、大家さんとぼくらに契約成立のお祝いとカツ丼を振る舞ってくれた。何だか良くわからなかったけどとてもめでたい気持ちになった。attaを語るにこの思い出は外せない。西村さんには本当に本当に感謝です。

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センバくんはいつも何かと手伝ってくれた、そして家も近所だったからよく飲んだ。武田手打ちのカレーうどん

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映像作家の太田曜さんも上映会後のパーティで来てくれた。ムッシュのフランス産パテとワインレクチャー付き!

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attaパーティ名物の武田蕎麦も披露

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まぁ、真冬はこんなもんです…

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"アッタか忘年会"ってのもやりました。

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atta galleryでの企画もいくつかやりました。
http://attatta.com/attagallery/info_2009.html

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過去最高にattaに人が集まった日、木野くん企画の"春だよね祭"2010.04.09、確か50人以上来てた。

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ぼくらの大好きな先輩アーティストのお祝いも出来ちゃったり。

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パーティーは山本画伯とお向かえの先生の参加率がダントツ(笑)

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約7年間、色々経験させてくれたり考えさえてくれたり、本当に良いアトリエだった。相棒・武田くんにも色んな面でサポートしてもらえて助けになったし、彼の制作プロセスを間近に1から見られるのはすごく贅沢で面白かった。羨ましいでしょ!

とても思い入れのある場所で後ろ髪を引かれる思いだけれど、ぼくはぼくでやらなきゃ行けないことも見えているので、ここはまぁ当然それを優先することになる。コジカさんが入ってくれることになったので、それが一番安心、良かった。

ぼくは、すでに新しい場所に移っていて、、、え、どこって?
まぁ、いろんな都合上あの地域を離れられないので、attaからは徒歩3分くらいの所です(笑)

ということで、これからもよろしく〜

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2014年11月09日

第1回新千歳空港国際アニメーション映画祭を終えて、

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第1回新千歳空港国際アニメーション映画祭

予想を遥かに上回るミラクルな映画祭でした。
ぼくがかねがね思い描く理想の映画祭像もかるがると超えてしまっていた、、、もちろん良い方向に。
あまりに濃厚なア二メーション漬けの日々だったので、終了後1日は、ほぼ放心状態、乗り物で移動しても、パソコンの前で作業しても、授業しててもフィードバックにオーバーラップ、時間のスキップ感が激しかった、、

とにかく凄かったのだけれど、それは、映画祭に行き慣れている人も、初めての映画祭の人も、来場した国内外の作家達も、関係者も、運営サイドもみんな一同に驚いたことでしょう。

映画祭についての印象は当事者だったりそうでなかったり、人それぞれで色んな意見があるのも確かだろうけど、でも、まぁ出される数字や報告を客観的に見てもその凄さを疑う余地はないし、来場したゲストやノミネート作家の顔ぶれ、上映プログラム、会場設営に当日の運営、どれもこれも素晴らしく充実していた。

世界初というプレッシャーを跳ね退けて、見事に誰も体験したことのない空港施設の中だけでの映画祭を実現した、新千歳空港は本当にお見事!!! 脱帽でした。

今回ぼくは、応募作の中からノミネート作品を選出する選考委員という形で関わらせていただきました。
(選考についての思いの丈は、前の投稿にて)
映画祭に関わった一員として、当日の状況とこの結果は本当に感動ものでした。

それでは、どこが良かったのかというところを以下に少しレポしてみる。
因に、ぼくもまた映像作家の1人として、そして少しは実施に関わった一員として、ここでは出品する作家の立場や映画祭の内側からの視点で見て行きたい。

まずは、何と言っても事務局の来場するノミネート作家、上映作家、ゲストに対するホスピタリティーの高さが初開催とは思えない程の完璧さだった。
国内外から来場する作家・ゲスト(その人数の多さにも驚き!)には空港内のホテルが提供され、期間中空港施設内ほぼ全店舗で使えるミールクーポンも手渡される。この時点でも滞在コストがほぼかからないことになるが、更にホテルのバーを作家やゲスト向けに深夜まで開放し(サッポロビールの見放題!)国際的なオフ会の場もしっかりと設けられていた。口コミで映画祭の売りの一つとなった温泉も皆満喫していたようだった。国外作家向けのエクスカーション(札幌観光)や作品関係者もゲスト扱いなど、細かなケアを上げるときりがない程。空港施設をフル活用して文字通りの”おもてなし”が実現されていたわけだけれど、そこにはアニメーションの作り手達へのリスペクトがとても感じられて気持ちが良かった。作家やゲストのアテンドについては、事前に事務局スタッフがアヌシーやザグレブといったアニメーション映画祭の老舗代表格をリサーチした研究成果の現れで、更にはそれらをコピーするだけじゃなくって、空港施設の特色を出してのアレンジが本当にセンス良く上手かった。

新千歳空港は近年空港内の商業施設拡大を進め、単なる観光地土産店だけにとどまらない、飲食、ショッピング、アミューズメントのサービスが充実し、映画館もそのひとつ。およそフェスティバルに必要とされる設備を兼ね備える国際空港の機能性を最大限に発揮してパッケージ化出来たこの映画祭は、今後世界的な先行事例としても注目されるんじゃないだろうか。

当日の運営についても、ほぼ全プログラムに配置された(記者会見やレクチャーにも)英語通訳には、やはり国際企画としてのプライドを感じたし、
統制のとれた意識の高いボランティアスタッフもしっかりと機能していた。ボランティアに関してはこの夏の国際芸術祭の経験者と近年自主上映活動が再燃しつつある札幌のアニメ・映像系の大学生達が中心だったことも一役買っていた。
初めての開催で、当日までどれだけの動員があるのかは誰も予想できなかったのだが、ほぼ全プログラムで満席という嬉しい異常自体に現場スタッフの対応も追いつかずの場面もあった。そこに事務局の上役(というか社長も)の方々も率先して上着を脱いでの誘導、座席調整に走り回る姿には、本当に頭が下がる思いだった。
ただ、その対応はとてもさりげなく的確だったところに現場主義のメンバー揃いの事務局能力の高さ、そして今回の大成功の要因が確実に見えた。
事務局の体制と運営には映画の内容と等しく、本当に感動した。

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映画祭は、10月31日の開会式からのスタートでしたが、そこでの名誉委員長古川タクさん、国際審査委員長のクリス・ロビンソンさん2人の言葉がとても印象的で共感できるものだった。お二人とも国際コンペのノミネート作品の充実ぶりと質の高さに言及さた上(選考委員としてとても嬉しい)、
古川タクさんは、アニメーションの可能性について、「音楽と同様に世界の様々な問題を切り開く切っ掛けになる力を持った表現世界だ、、」ということを手塚治虫氏の言葉やご自身の経験から語られた。クリス・ロビンソンさんは、事前に原稿を用意せず「皆の顔を見ながらアドリブで行くよ、、」とカジュアルに始めつつ、空港映画祭の奇抜さと新しさについて語られ、最後に「”フィルムフェスティバルトラベラー”が流行る切っ掛けになるかもしれない、、」という考察も含めた。
お二人のアグレッシブな挨拶に引き続きオープニング上映されたのが、インターナショナルコンペティション1である。実はこのコンペ1が本映画祭の中で最も曲者プログラムだった…。スポンサー企業や関係者各位が一同に集い座席の殆どがスーツ姿で埋まるフォーマルな雰囲気の中での上映に、土居*さんも冷や汗ダラダラ。(*アニメーション研究・評論家の土居伸彰さんは本映画祭のアドバイザーであり、立ち上げからこの数ヶ月間、身を削って映画祭実施に尽力された最重要人物の1人)
いざ上映が始まると、作品毎に戸惑いをヒシヒシと感じる拍手の中にも、アゲンストな空気ではなく、「あれ?いつもと違う、、、」「国際アニメーション(会場内の多くの方が未体験)って、こういうことなのねぇ、、、」と1作毎にゆっくりと解釈する様な雰囲気だった。少なくともぼくの周りの客席はそうだったし、上映後も拒否反応みないたことは無かったはず。上映後、レセプション会場で見た土居さんも小野さん*も一先ずホッとしていた様子だった。
(小野朋子さん、土居さんと共に立ち上げからあらゆる方面を奔走した本映画祭事務局の鉄人ディレクター、多分仕事中は手があと4本くらい増えてるはず)
個人的には、この開会式は、日本のアートアニメーションのパイオニアと現在の国際アニメーションシーンのご意見番筆頭に導かれ、コンペ1で攻めきったことで、映画祭のポリシーを初回にはっきりと提示できたんじゃないかと思うし、その光景はかなりかっこ良かった。

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期間中は、とにかく上映を見尽くそうと、常にシアターに居たわけだが、今回初めて入った新千歳空港じゃがポックルシアターの映画館設備の充実ぶりにも驚いた。シートがラグジャリーでリッチな上、スクーニングのコンディションも良質でスクリーンもとても大きい。これは上映される作家にはとてもとても嬉しいこと。更には、35mmがかけられる!近年国際映画祭にとってはレトロスペクティブのプログラムの存在も重要な位置づけで、それがオリジナルフォーマットで上映可能という付加価値はとても高い。今回は爆音「アキラ」、爆音「ファンタスティック・プラネット」に「空飛ぶゆうれい船」、「マジンガーZ対暗黒大将軍」と、とんでもない奇跡の共演が35mm上映で実現していた。往年のセル作画による画材や線の生々しさとフィルムの質感は、特にノミネートした若手のカートゥーン系アニメーション作家への影響が強かったと思う。

また爆音に関して言うと、以前、恵比寿映像祭(@東京都写真美術館)のレクチャートークにて、爆音プロデューサー樋口泰人さんのお話の中で、爆音でかける(かけたい)映画の場合、今はオリジナルフォーマットのフィルムが製作元でも配給元でも保管されていないことが少なくなく、更に配給の終わった作品に対しては敢えてDCP等のデジタル媒体へ変換して保管ということもまだまだ進んでいない状況。なので上映ライセンスだけを得て、セルBDでの上映というのも止むを得ない場合もあるという現状解説があった。それでもプロジェクターの性能が上がっているので画的な面ではそれ程の支障はないそうだが、爆音という特殊な上映スタイルの場合は、デジタル化されたものよりもフィルムのサウンドトラックの方が不思議と音の具合が良く、爆音ならではの通常上映にはない映画の音(というか空気感みたいな第六感的なところ)を再現出来るということだった。またフィルムのトラックも磁気よりも光学の方が物理的に強いということにも触れられて、興行のプロからも上映媒体の構造的なところが現段階で問題点になってきたというお話が大変興味深かったのを思い出した。

話は少しそれたが、じゃがポックルシアターでは、加えて最新の3D上映にも対応しているのだから、現状で上映出来ない作品はIMAXを除いてはほぼ無いというスペックを備えていることとなる(もし必要があれば16mmや8mmは持ち込めば良い)。
今回招待プログラムで上映されたNFBの3D特集も、研究的、作家的視点で見てとても興味深い内容で参考になった。
あと、できたら水江さんのWANDERを35mmで見たかった。

じゃがポックルシアター
http://www.new-chitose-airport.jp/ja/theater/guide/

プログラム全体を見渡すと、勿論コンペプログラムを軸に組まれているのだが、レクチャープログラムが充実していたことも初回として映画祭の役割を位置づける意味で非常に良かった。コンペとパノラマの他は、ぼくはこのレクチャープログラムを積極的に見て回った。キッズ賞子供審査会の進行役だった為、古川タクさんのレクチャーを見逃したのは残念だったが、国際審査委員のお二人岸野雄一さん、ジェレミー・クラパンさんのレクチャーはとても勉強になった。短編系の国際映画祭や実験映画系の映画祭などでは、審査委員の経歴や専門性、パーソナリティをプレゼンテーションするプログラムが組まれているのは割と一般的で、その年の審査がどういった視点で進められるのかを明確にノミネート作家、観客へアピールする目的も含められる。それはノミネート作家にとってはとてもフェアなことだし最終的に決まる受賞作品の説得力にも繋がる。その意味で、日本におけるインディペンデントなアニメーションシーンの成り立ち(名誉委員長:古川タクさん)、アカデミックなアニメーションの専門性(国際審査委員:岸野雄一さん)、国際的な評価を得たアニメーション作家の仕事(国際審査委員:ジェレミー・クラパンさん)の3本の構成は的確だった。

更に今回、出色のレクチャープログラムがノミネート作家であり特集上映も組まれたデイビット・オライリーさんの過去作上映&トーク、これが素晴らしかった。
デイビット・オライリーさんは、アニメーション分野に留まらず近年注目されるメディア系アーティストの1人、どんなアーティストなのかは映画祭HPのリンクからご確認いただければと思う。
http://airport-anifes.jp/david-oreilly/
http://airport-anifes.jp/adventure_time/

レクチャーは、大人気作「アドベンチャータイム」(全米CARTOON NETWORK.にてオンエア中)にいたる過去の作品上映から始まった。ぼくは過去にいくつかの映画祭でそれぞれ見ていたが、改めてまとめて見るとやはり面白かったし、電脳世界的インパクトが強烈でグッサリとプラグインされた。そして上映後にトークという流れ。内容としては、現代のアニメーション、映像等の表現シーンにおいて、オリジナル(今までに見たことの無いもの又は表現されたことの無いもの)の創出はほぼ不可能であり、それよりも様々な既存の物事、表現を組み合わせて行くことに創造性の価値があり、それこそがアートだ、、、ということだった。
国内外から集まったノミネート作家(主に手描きやストップモーションのカートゥーンアニメションの)も参列する中での、オリジナルを捨て去る発言とこの創作哲学の展開はとてもとても刺激的な切り口だったと言える。ぼく自身は、”再構築”を表現主題の軸にしているのでオライリーさんの発言にはつくづく納得の行くものだったが、加えて流石と思ったのは、再構築や2次的創作についての評価や批評について言及したことだった。現段階では、既存のモノ同士を組み合わせる表現に対しては必ずしも良い評価や価値付けがされているとは言えず、オリジナリティーが損なわれたもの、怠けた表現と見なされることも少なくない、しかし評価する側にしろ、表現する側にしろ、現代においてリアルに現実を表現したり、何かを言おうとした時には、オリジナリティーに固執する考えや評価しか持ち合わせないことの方がナンセンスだと言い切った。アートヒストリーの中でオリジナルの表現様式が生まれてきたことにも触れた上(トーク全体の尺的にそこを掘り下げる時間はなかったが、しっかりとその点も原稿を用意していた様子)、今の世界の捉え方、見方に映像・アニメーションを扱うアーティストとして同業者や評論家へ向けての挑戦的とも言える姿勢がとてもかっこ良かった。このトークも会場は満席(約80名程のオーディアンス)の中で、評論・研究系の方がどれほど居たかは定かではないが、地元の大学生や若手の作家は多かった様に思う。このレクチャートークが今後、映像・アニメーション分野において再構築的表現や2次的創作についての認識、評価を活性化させる切っ掛けのひとつになれば良いなと思った。トーク後に土居さんに是非このトークを何かしらの形で残せないのかなぁ、、と伺った所、これからオライリーさんも執筆・出版の予定があるとのことで、またどこかで見られる機会があることを期待したい。最後にQAでぼくは、ひとつ気になっていたことを質問した。「ミックスの表現についてとても共感できるのだが、映像の中でイメージを組み合わせる時に意識していることは何か?」それに対してオライリーさんは「オーバーラップだ。」と答えた。ぼくはその一言でもの凄く納得がいった。そして、そのキーワードはオライリーさんの作品を解釈する最も重要な概念ということも理解出来た。ぼくは今、再構築的表現において”フィードバック”と”追体験”ということを意識して作品を作っているのだけれど、オライリーさんの”オーバーラップ”という概念は、インスピレーションからエクスプレッションをもの凄くスピーディーに処理して、リアルタイムに直接的に今現在を描き出しているのだと思う。

さて、ここまで主観的だがこの映画祭の特質すべき良かった点を上げてみた。他にも、子供向け(大人でも充分に楽しめて、学生は勉強になる)のアニメーション制作ワークショップや人気商業アニメーションの展示ブースにアトラクション、コンペは鋭くてもお祭りとして楽しむ為のプログラムも充実、長編作品も楽しめる、A4フルカラーの贅沢なパンフレット、ノミネート・招待作家の物販ブース、関係者へ迅速に情報提供をしてくれるニュースレター、分かりやすく作り込まれたインフォメーションの造作、看板、ポスター、フラッグなどの会場内演出・告知の充実、殆どNGのないプログラムのスムーズな進行等々、初めての映画祭として良かったところのトピックはまだまだ尽きない。

そして、やっぱり元に戻るようだが、プログラム全体の構成がユニークで、他ではやったことのないという新千歳ならではの特色を出せたことが、今回の成功を導いた最大の要因だろう。伝統ある欧米の国際アニメーション映画祭に習い、世界基準で最高水準の先鋭的なコンペノミネート作品、応募作の中から審査対象外だが良作を集めたパノラマ、国内外で商業的に成功を収めたアニメコンテンツ、レクチャープログラム、日本アニメ文化を照らすレトロスペクティブ、爆音や変態といった他の独創的な興行との連携、地元作家の特集が絶妙にレイアウトされていた。そしてそれら全てが平等にプレゼンテーションされ来場者が自由にチョイス出来るという状況は出品作家の立場からもフェアな印象で気持ちが良かったし、それは国際空港のフラットな滑走路に様々な所へと行き来する航空機が並ぶ光景とオーバーラップして美しかった。まさにコンセプト通りの空港映画祭の姿が見えた。

今回このような映画祭に関わることができで本当に幸せだった。

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ぼくが言うのも本当に烏滸がましい限りだが、映画祭にとって初回に関わったノミネート作家や上映作品、多くの専門家達との関係は、継続して行く上での大きな財産となる。自由で先鋭的な表現を生み出すアニメーション作家達への敬意と、その作品を享受出来る多様な感性を育む役割を映画祭は担っていると思う。そのことを映画祭とまた作品を見る人たちが絶えず意識できことで、見る側の質(作品やアニメーション文化の理解度)も年々向上出来たらと思う。先行する欧米のアニメーション映画祭を視野に入れつつ、将来、”新千歳的な目利き”が集う映画祭になったら、国際的なアニメーションシーンにもより強くアピール出来る様になっていくと思う。それを願っている。そして、ぼく自身もそのことを意識して今後の作家活動に繋げて行きたい。

最後に、今回立ち上げ当初から常にブレること無くド直球を投げ続けた孤高のエース土居さんと、常にその豪球をど根性で受け止め続けた小野さんの最高のバッテッリーに最大級の賞賛と労いを、こんな夢の様な映画祭を実現してくださった事務局えんれいしゃスタッフの皆さんに感謝の気持ちを送りたい。
新千歳空港国際アニメーション映画祭、本当にありがとうございました!

来年を楽しみに、粛々と自分の仕事、映画の制作と研究に戻ります。
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2014年10月29日

新千歳空港国際アニメーション映画祭2014開催!

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いよいよ今週末から開催される、新千歳空港国際アニメーション映画祭、本当に楽しみです!
二日前にしてかなり興奮してきた、早く空港へ行きたい!

今回ぼくは、誠に僭越ながらコンペティション作品の選考委員を担当させていただきました。
映画祭関係者が本当にハイクラスオブザワールドすぎて、お話いただいた時はかなり恐縮してしまいました、、が、とても興味深いお仕事だったので、引き受けさせて頂いた次第です。
欧州中心に国際映画祭は少なからず見てきたつもりですが、アニメーション映画祭は未見でしたし、
実験映画作家としてどのような関わり方ができるのか少し不安もありました。
只、お話を頂いた時から、「この映画祭、攻めるな…」という何とも言えない直感があって、エントリーを待っている間からワクワク感が募っていました。

選考を始めてからは、驚きの連続、700点強の世界中から集まったアニメーション作品に、ぼくの中で次々と映画やアニメや芸術の垣根が崩されて、自由で多様な価値観を持った表現の宇宙に迷い込む様な感覚でした。でもそれは、困惑とか辛さみたいなことではなくって、何だか不思議と清々しさというか開放感のようなところもありました。今思うとそれは、すごく純粋なもの(作品)に触れた所為なのかもしれません。肉体的にはかなりつらかったけれど、(ワールドカップもできるだけ我慢したけれど、)精神的にはかなり良質な栄養を注入される毎日でした。

選考会では、今回映画祭の立ち上げから尽力されているアニメーション研究・評論家の土居伸彰さんとアニメーション作家の倉重哲二さんとの3人で、じっくりとエッジを立てる様な真剣な議論と選出ができました。これもまたぼくにとってはとても良い経験と勉強になりました。 

そして、最高に切れ味の鋭いノミネート作品が出揃ったコンペティションプログラムは、本当に世界に誇れるプログラムになったと思います。作品それぞれが持っている自由さや衝撃の強さ、思考の深さも折り紙付き、それが束になった時、プログラムとしてのパワフルさは、もう、見る人の人生観を変えてしまう程だと断言できます。これは大袈裟でなく真剣にそう思っています。
そんなコンペティション作品を是非是非見て頂きたいです!!!

それと同時に、作家を続けていると、他の作家の作品によってすごく救われたり、自分の仕事が報われたと思える様なことが時たまあったりします。映画祭って、作家にとっては自作の成果を評価されるだけじゃなくって、そう言う経験が高密度で集中的にできる場でもあって欲しいと、ぼくは常々思っています。

見る人が、日常と少し離れた所から何かを発見したり、世界中の作家同士がボーダレスに出会えたり、
開催地域の作家に何かしらの切っ掛けを与えてくれたり、それが世界基準のかなりハイクオリティーなところで今実現されようとしているのが、この新千歳空港国際アニメーション映画祭なんじゃないかと期待しているのです。

すごく乱暴な言い方になるかもしれないけれど、もう、”日本で…”とか”北海道で…”とかそんなことは飛び越しちゃって、新千歳がピンポイントで世界中のアニメーション作家や作品、研究者やファンや映画祭とリンクして、常にフレッシュでエキゾチックな表現世界の発着地点になったらいいなぁって願っています。

今回、アニメーションとしてはかなりアウトサイダーなぼくを関わらせてくださった、事務局の小野さんや映画祭実行委員、関係者の皆さま、土居さんに本当に感謝です。

開催期間、目一杯本気で楽しみたいと思います!!!

皆さま、どうぞどうぞ、空港で濃密な文化の日をお過ごしください!
***
新千歳空港国際アニメーション映画祭2014
日程:10月31日(金)〜11月3日(月・祝)
会場:新千歳空港ターミナルビル(じゃがポックルシアター、センタープラザ、イベントホール翔等)
WEB:http://airport-anifes.jp
***
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2014年02月28日

2月のインプット

さて、2月は早いブログアップも滑り込み、
大学の方は1年間で一番過酷な1月末〜2月頭を乗り越えて半ばは少し落ちつき、
第2波は2月末〜3月はじめに来ます(来てます。)

ということで、毎年のこの時期の恒例になっていますが、リサーチに東京へ行ってきました。
この時期は、主に恵比寿映像祭の上映、展示が目的ですが、今回は丁度文化庁メディア芸術祭の会期にも重ねて来られて、その他興味のある企画展もいくつかあってなかなか良かったです。

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(雪の東京1)

2/13、到着後メディア芸術祭の海外映画祭特集ファントーシュ国際アニメーションフェスティバル、恵比寿映像祭上映プログラム1本を鑑賞。
夜は、これも東京恒例コンちゃん、田中くんと飲み3時迄。この飲み会はいつもホントに楽しい。
忙しいところありがたいっす。

2/14、アンディ・ウォーホル展:永遠の15秒@森美術館、さわひらきUNDER THE BOX, BEYOND THE BOUNDS@オペラシティアートギャラリー、恵比寿映像祭上映プログラム1本を鑑賞。

ウォーホルは、好きなアーティストでもあるし、複製メディアを扱う作家として少なからず影響も受けています。
今回は、期待通りに50's商業デザイナー時代のドローイング仕事をまとめて見られたのがとても良かった。映像作品の方は、作品を個別に丁寧にというよりは、資料的に小さなモニタ展示と1展示室にザックリとした印象をドカンドカンと大型タブロの如くまとめてプロジェクション。映画作品は本来の意図とはそれているのだけれど、展示空間で映像的な体験という点では、これはこれで良いなぁと思った。
「スクリーンテスト」を1ch、画面分割で見せていたのが意外と面白かった。でも、この作品だけを超大画面で人数分全て展示というのもいつか見てみたいなぁ。(最近では、2009年の恵比寿映像祭にて小さめのモニタ展示がありました。)

展示全体としては、ウォーホルというポップのスーパースターの為人を生立ちから、年代毎の仕事、作品の遍歴をその当時本人が発した言葉と共に、分かりやすく丁寧に展開してくれています。家族写真や旅行の写真がすごく良い。ウォーホル語録は、まぁその通りと思いつつも、割り切れないこの身にはザクっときますね(笑)。「制作中は機械になりたい」というのは共感。超ポジティブにネガティブで気持ちよかった。

少し引いて見ると、ウォーホルをある面で当時のアメリカの象徴と見立てて、ウォーホル大好き=アメリカ大好きみたいな感じのとても肯定的な内容です。
欧州で見て来た様な、コレクションの中に時系列に並列的に並べられた客観的なウォーホルとは印象は全然違いますね。勿論回顧展なのでそうれはそうですが。東京の後は中華圏の主要都市を巡回する様です。

一番ウォーホル的だったのは、展示室に直結している特設のミュージアムショップ(お土産屋さん)。「あ、これはまさにウォーホル!」って(笑)ウォーホルグッズの氾濫です。

さわひらき、同年代の映像系アーティストとして以前から興味のある作家です。お会いしたこともなく一方的に作品を見ているだけなのですが、作品を初めて見たのは、横トリ2005(アートサーカス)だったかな。その後、国内での展示がある時は、タイミング良く結構見ていました。
一貫して、1ch(シングルチャンネル*)の映像インスタレーションで空間構成というスタイルだと思います。
近年国内で美術館企画展示室全体を使った規模での、映像インスタレーションの作家個展というのは、2009年の束芋 断面の世代@横浜美術館以来じゃないでしょうか?(映像も要素としてふんだんに取入れたインスタレーション系作家個展は幾つかあったと記憶しています)
さわさんの作品は、描かれる映像の内容と空間構成という点で、時間、空間、映像(の中身)をしっかりとフィットさせられているというのが初めて見た時からの印象です。

過去作も含めた展示でしたが、今回初めて見た作品(2012年以降の作品)の中には、これ迄の作品と比べて、よりナラティブな展開を意識された構成、ドキュメンタリー性の高い内容のものがありました。作品の解釈として言語的に理解しやすい面が強まり、ポエティックな表現からより映画的な構成に変化したという印象受けました。
また、今回さわさんの作品を見ていて少し気付いたことは、作品中の光に対する扱い方、感覚が西洋的だなぁと思いました。
白黒主体の映像から感じていた独特の気配の様なものは、そう言うことなのかなぁと。
長らくロンドンを拠点に活動されているそうなので、現地での生活や経験から自然と醸し出されたものなのか若しくは、意識的に取入れられているのかなと想像しました。

ぼくも長期とは言えないまでも1年間をドイツで過ごしました。その間ドイツ国内はもとより、欧州各所(主に中央、北、東、もちろんロンドンも)を見て回り、感じたことの1つに光に対する日欧間の感覚の違いがあったのです。
ぼくが回っていたのは、北海道とは気候風土がよく似ているといわれることもある様なヨーロッパの地域でしたが、現地の実生活に触れてみると、例えば生活空間に自然と取入れられているろうそくの明かりや街の中の街灯の明るさ、住宅から漏れだす明かりなど、暗がりの中に必要な分だけの光を灯すことを好んでいる様に思いました。均一にどこも明るくしていることが一般的な日本の生活空間の明かりとはずいぶん違っていました。初めはそこに違和感を感じていまいたが、ぼくには、どちらかと言うと欧州スタイルの方が身近な所で扱う光に対して意識的に大切にしていて、それが厳かでどこか神聖な感じもしていました。
その感覚の違いについては、いくつも訪れた現地の教会内の採光の仕方や照明、博物館での生活様式の遍歴を見せてくれる郷土資料等の展示を見る中で、宗教観の違いと日常生活レベルで信仰が意識化、様式化されていることに起因するところがあるのかなと考えていました。

そう言ったことをヒントに改めてさわさん作品と対峙すると、映像自体の構成、作り込み(光の表現)に加えて、暗闇の空間の中に如何に映像(光)を配置するのかというインストールの面でも考えながら見られたのが良かったです。

ついでに、ここで少し映像インスタレーションについて思うこと。
映像インスタレーションは、手軽で高性能なコンシューマー映像ツール(ソフトもハードも)が出そろって、それらの一般的な普及率の高まりと同時に、現代美術シーンにおいても映像が展示空間に存在ことは、すっかり見慣れた光景となりました(今更言うまでもなく)。
ただ、個人的には興味を魅かれる映像系の展示作品に出会うのはとても稀なことです。

最近ギャラリーや美術企画展などの映像系の展示で良く見かけるのは、
・映画やその他マスメディア映像の部分的なところにインスパイアされた様な映像ソースで構成されたもの、
・日常的に撮った(若しくは、撮れてしまった)様な映像の断片的な集積、
・ビデオアート創出期の作品から発想を得た様なアクション、パフォーマンス映像、
・ドキュメンタリー映像、インタビュー映像、
・リサーチ系、プロジェクト系、ワークショップ系の記録映像、
といったところでしょうか。勿論全てあてはまるわけではないけれど、傾向としては強いと思います。
因に、映像作品のプレビューとして展示空間にモニタ展示やプロジェクションしているものは除きます。

そして、こういった作品と対面する時に考えることは、インスタレーションである必要があるのか?ということ。
例えば、単にドキュメンタリー的な映像の壁投影といった作品を見たりすると、映像の内容より先に展示手法としてとて疑問が残ります。インスタレーションである以上、映像の内容と映像が空間に配置されていること自体が要素化された状態で構成された空間になっていることが重要ではないかと思っています。その点で、インスタレーションとして、しっくりくる作品を見られる機会はとても少ない気がしています。
また、絵画や写真等のタブロー作品と同等に、展示壁に配置される展示手段にも、まだ少し違和感を感じています。
(作品自体のコンセプトとしてその展示法が選択されている企画や作品は別として)…
これは、ぼく自身が映像表現を映画から出発し、上映志向の表現を主体として続けて来ている立場としての捉え方なのだと自覚はしています。


(書いてます、・・・・・・・もう一息)

*鑑賞者が作品(投影された映像)に参入できるインタラクティブな表現が出現して以降、インタラクティブアートとビデオアートの差別化もあってか、映像画面を空間へ投影するのみの映像インスタレーションをシングルチャンネルと明示することが普及している。1つの映像ソースに対して1つのモニタ出力若しくはプロジェクションを1ch(チャンネル)とし、複数の映像ソースをそのソース数分のモニタ出力、プロジェクションを行う場合その入出力数に応じたチャンネル数で表記される場合もある。例:4つの映像を4画面で出す=4ch。

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(雪の東京2)

2/15、前日からの記録的な東京の雪が朝まで続き、午前中はやむなく宿でデスクワーク。
本当は見たかった国立近美フィルムセンターの小津安二郎の図像学と恵比寿映像の関連企画にもなっていたローレンス・ジョーダンとコラージュ展をロスト…、レアだったのに残念。

午後からは晴れて、新美で開催されている文化庁メディア芸術祭へ。本展を見たのは初めてでした。
エンターテイメント部門のグランプリ作品「SOUND OF HONDA/Ayrton Senna 1989」の受賞者プレゼンを鑑賞。有意義なプレゼンでした。この作品は、アイルトンセナが1989年の日本F1Gで出した世界最速ラップの走行データが印刷された紙(紙切れ1枚)が残されていて、そこに記載された波形や数値から当時セナがサーキットで奏でたであろうエンジン音を再現するというプロジェクトです。
最終的には、最速ラップを出した鈴鹿サーキットコース中にLEDとスピーカーを張り巡らせ、光によるスピードの可視化とともに実際の場で忠実にライブで再現するという壮大なサウンドインスタレーションの様な作品となっていました。

制作チームの話の中で興味深かったのは、データを音声化するプログラムに加えて、当時その場で生でその光景とエンジン音を体感した人達の記憶に残っている感覚を忠実な再現の為のチューニング役として重視していたところ。ぼくはこれまで、身体的なことや想像の範疇をより正確に客観的に何かしら形づくる為にアルゴニズムが用いられると思っていたのだけれど、この作品の場合はその逆で、人の体に入力するもの(この作品の場合、過去の音声の再現)の精度を上げる為に、主観的な人の感覚を最終的な判断材料としているプロセスが新鮮に感じました。
人が作ったアルゴニズムの差分で失われてしまう物理的な情報を補うのは、人の記憶や感覚ということなのかな。

更に、制作メンバーの1人真鍋大度氏の発言にあった、LEDを用いて速度をコース上に可視化する際に、データ解析の解像度を如何に設定するかに難儀したという点も興味深かった。
アルゴニズムを扱う立場だと解像度や差分の設定が任意で、その設定や調整に個性が出たり表現性が備わるのかと解釈しました。
イメージを形成する解像度にしろ動きを生成するフレームレートしろ定まったフォーマットの中で如何に表現するかとう映画作りとは全く違う表現上の感覚があって、それもまた新鮮でした。
差分に見出す表現性という観点では、もしかすると文学における行間だったり絵画や写真表現における余白の様なものに共通することなのかもしれない。そう思うとアルゴニズムがなんだか少しロマンチックなものにも思えたのです。

夜は、森美のウォーホル展に合わせて渋谷のイメージフォーラムで開催のウォーホル映画回顧展へ。ウォーホルの映画はこれまでも何度かみているけれど、未見の「チェルシー・ガールズ」(1965)を見る。予想外の満席、立ち見。外の行列で冷えきった体には丁度良かった。
スクリーンに対しては好ポジションをとれたけれど、みっちりすし詰め状態のシアターで210分、2画面マルチのフィルム上映、かなりヘビーな映画体験でした。でも、面白かった。ウォーホルの映画は、ノンナラティブ、超長回し、デタラメな(と言われる)カメラワークなどで嫌厭されがちなところもあるけれど、ぼくは結構好きなんです。確かに映画として見ると苦行に近い鑑賞の辛さはあるかもしれません、でもウォーホルのアーティストとしての志向を踏まえて、絵画やシルクスクリーンの延長で見てみると、秒間に大量に似た様なフレームがイメージ化される映画の仕組みは、ウォーホルにとってはもの凄く効率的に複製品を生成すツールだったはずで、更に時間を取り込むことで自動的に生まれるフレーム間の微妙な差異も魅力だったのだと思います。そう想像しながらだとウォーホルの作ったイメージをフレーム単位で高速に大量に消費してる感覚が面白いのです。
しかもフィルムで見ると、結構劣化してしまっているので、ウォーホルが制作当時には意図していないテクスチャーが物理的についてしまっていて、そういうのも面白い。正しい見方ではないかもしれませんが、、。
その意味で、「エンパイア」(1964)も大好きな映画です。まだ約8時間の全編は見たことがないですが、いつか見てみたい。勿論フィルムで。

2/16、Kawaii 日本美術@山種美術館、恵比寿映像祭の展示作品鑑賞とレクチャー「Fシネマ・プロジェクトフィルムから映像の現在を考える」に参加。

Kawaii 日本美術、日本のカワイイの根元を求めて見に行く。むーん、動物が凄まじく可愛いぃ〜。
山種美術館は最近とても好きな美術館の1つ。そして行くとショップでハガキを沢山買ってしまうのです(海外のお友達向け)。お土産としてとてもよく出来てる。

恵比寿映像祭、展示作品を見て、先述した映像インスタレーションの在り方について、改めて考えさせられる。
今回は「トゥルー・カラーズ」というテーマで、色々な世界の事象を地域性とグローバリゼーションの影響という視点で捉えられた作品が比較検証するような形で集められていました。展示作品でもドキュメンタリー性の強い作品が多かった印象です。

ぼくの中では、インスタレーションとして最も成立していると思ったのは、ホックニーの作品「ジャグラーズ」(2012)でした。
この作品は、2012年の大個展「A Bigger Picture」でも見ているのですが、基本構造は、1つの光景を時間軸と多視点で分解、再構築したホックニーのフォトモンタージュ手法であるジョイナーフォトの動画バーションです。展示作品の完成度としては、映像作品、インスタレーションの作品群の中にあって、画家が映像を道具やマテリアルとして扱っい動くイメージをフィックスしたタブロー作品として際立っていました。

レクチャー「Fシネマ・プロジェクト フィルムから映像の現在を考える」
フィルムに関して、インディペンデントなコミュニティ連携、アーカイブ、興業、美術館の4者の立場からの現状報告と意見交換。
マスな商業向けには、ほぼ終焉を迎えたと言える映画フィルムについて、商業映画の制作やフィルム製造メーカーの事情とは切り離したところで、過去100年間につくられてきた知的財産の保管、そのアーカイブの運用を論点に…

(書いてます、・・・・・・・もう一息)

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(三島駅から美術館へのバス)

2/17、IZU FOTO MUSEUM 「増山たづ子 すべて写真になる日まで」
帰りの日は、東京から
快晴で車窓からもクッキリと綺麗な富士山!
三島の駅から送迎バスで美術館へ向う途中も綺麗に見え過ぎててテンションが上がっ、、、てる場合じゃなかった…

(書いてます、・・・・・・・もう一息)
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2014年01月06日

2014スタート

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明けましておめでとうございます!

さて1年越しのブログ再開でございます。
昨年2013年、帰国してからの1年は、ドイツ滞在の1年間以上にアッという間に過ぎ去ったと言う感じです。色々と自分が予定していたこととは違ったことがあった1年でしたが、まぁまぁの年だったかなと思います。
春はドイツで制作した新作「A FOUND BEACH -omnibus-」がIFFで受賞して、大変ありがたいことに、さい先の良いスタートを切ることがが出来ました。
作品の内容としてはまだ始めたばかりの実験だったので入選することすら予想外で、とても嬉しかったのと、テーマや視点に対しての評価だと受けとめているので、今後に繋がる良い結果となりました。
この作品は、プロセスから一貫してデジタルでパッケージした初めての作品で、IFFの会場では大先輩作家の奥山さんの宣言「私のフィルム元年!!!」に衝撃と共に勇気づけられましたが、実は密かに「ぼくのデジタル元年」でもあったわけです。

夏場からは、特に大学の仕事がかなり忙しく、みっちり学生と何かしらやってたなぁ、というままに冬になってしまった感じでした。といっても忙殺された感はそれ程なく、タイの大学への出張や、結構大きめな規模のプロジェクションマッピングの実証実験など、教育の立場から色々と良い経験ができました。
時間のコントロールが上手く行かずに自家現像のベストシーズンにフィルム作業が出来なかったのがちょっと反省点。
ぼくのアトリエの暗室は40年物の木造建築で暖房設備も良くないので、冬場は温度管理の問題で現像作業がほぼ出来なくなってしまうのです…

制作の方では、ドイツ滞在中に欧州各所で見て来た映像アンド美術の流れを振り返りつつ、じっくりテーマ設計に取り組めました。只今手掛けているのは2本。1つは前作に引き続きポストカードの作品。もう1つはフィルムの作品。作品の詳細やその周辺のことは、これから追々紡いでゆきます。

ここでちょいと写真をっと、IFFのとタイへ行った時のもの。

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(IFF会場、ITO-sensei撮影)

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(大先輩実験映画作家奥山順市さんLIVE@Super Deluxe)

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(タイ、アユタヤ遺跡)

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(タイ、通りすがった宿近くの歓楽街ストリート)

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(タイ、水上マーケット)

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(タイ、バンコクのフィルムメーカーと)


冒頭で少し触れていますが、また一昨年このブログを見ていただいていた極少数の方々はご存知の通り、2012年は約1年間をドイツで過ごしました。(在独中のレポは過去ログにて)
2013年はその経験をアウトプットする年と想定していましたが、然う然うスムーズには行かないのもで、ぼくにはもう少し咀嚼の時間が必要でした。
あとは昨年の前半は、かなり思考がネガティブで、どこかモヤモヤしたストレスフルな気持ちでした。が、途中からネガティブなこと自体がそれほど悪くはないなぁと感じ始めて、色々とクリアになってきました。仕事が忙しかったことも良い影響だったかも。

ネガティブからのソリューションからの新展開

今手掛けている作品は、テーマ設計の段階で、そんな中身(思考や精神性)の変化を介しているので何かしら面白い展開になったら良いなぁと思っているところでもあります。次はこの中身の変化に技術を追いつかせて表面的な変化(映像なので見た目のことです)に繋げてゆきたいというのが、今年の目標の1つです。

帰国後の新居は、運もあるけれど、じっくり時間をかけて探した甲斐あって、すごく良い環境です。
居間の大きな窓から望む風景が特にお気に入りで、時間毎、季節毎の空、山の変化は格別なものがあります。

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12月は、仲のよい友達、久しぶりに会う先輩方と楽しい時間を過ごせたとっても良い年末で、お正月は1年越しに家族でゆっくりと良い年をむかえることが出来ました。

新年明けて、今年は色々と新たなトライの年にして行きたいと思います。
まずは、着手中2作品の完成を、そして、昨年続けた咀嚼を徐々に形にしてゆくこと、
大学の仕事の方は、恐らく今年も予想外の展開が舞い込んでくるとは思うけれど、より自分の専門をフィットさせる意識を高めること、
それらを目標にしていこうと思います。

現時点での実行計画リストアップ
・新作2作品の完成
・映画祭エントリー
・上映企画(目標2回)
・ロードバイクデビュー(Yくんと一緒に)
・論文執筆
・制作環境の改善(暗室問題解決)
・語学継続(英語6割独語4割くらいで)
春迄にはもう少し項目が増えていくことでしょう

今年のテーマは、「ポジティブ!&ポジティブにネガティブ!」それと「スピードアップ」でございます!
(今迄こんな風に考えたことはないけど、今年はあえて)

もひとつ大きな報告は、また次の機会にでも。

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(お年賀)

それでは、みなさま、実り多き良き1年をお過ごしになれますように。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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2013年01月08日

2013

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新年あけましておめでとうございます!

新年は、夢に見たマッターホルンを拝みに行って来ました。
ミラクルな天候にも恵まれて、クッキリとした全貌から、先端に雲がかかり、美しい夕焼けまで存分に堪能できました。

映像もアートも無しに、唯々、自然の光景に没頭するのも良いものです。
とても必要な時間。

スッキリと新年を迎えられた気分です。

去年は、人生初の海外生活で、本当に色々な経験をさせていただきました。沢山の人にお世話になりました。
本当に感謝、感謝、感謝です。

今年は、この溜め込んだ経験を形にして行く年にしたいと思います。

帰国まで残り僅かとなりましたが、リサーチはみっちりと詰め込んでいるので、
気持ちを新たに、ラストスパートです!

ブログの方は、昨年11月頃から、インプット、フィードバックと言語化によるアウトプットのバランスが乱れてしまって、停滞していましましたが、ネタは揃っているので、また徐々に上げて行きたいと思っています。

皆様、今年もどうぞよろしくお願いいたします!

Matterhornの写真はこちらにて
http://www.facebook.com/media/set/?set=a.395330623885549.96124.100002258443318&type=1&l=8994702a40
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2012年11月20日

記憶の価値(1)

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カッセルで開催されているドキュメンタリー国際映画祭Kassel DOKへ視察。

カッセルに着くとdocumentaの時の人の賑わいはどこへやら?のゴーストタウン状態…
そんな中、駅直結の映画館だけが、映画祭参加者で賑わっていました。

Kassel DOKは、ヨーロッパ外ではそれほど認知度の高い映画祭ではないと思います。
でも、ケルンの知り合い映像作家達もこぞってドイツ国内ではおススメとして上げられる映画祭の1つ。


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実験的な作品、アニメーション等も含まれ、インスタレーション作品の展示も行われている、Extended Documentaryな映画祭でした。
映画祭としては、約一週間の中、扱う作品数は大量で、全てを見きるのは難しい程。各プログラムの担当者が、作品毎に作家と作品を丁寧に紹介するのが好印象です。
もちろんQ&Aもみっちり、その為にタイムテーブルはいつも押してしまうという状況です。映画祭の進行は基本的に全て英語で進められます。


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カッセルにはフィルム、アートを教える大学もある為か来場者には若い世代もかなり多い。
会場は駅構内のメインシアターの他に徒歩10分圏内に2つとdocumentaでも展示会場になっていた、駅舎脇のギャラリースペースにてインスタレーション作品の展示となっています。
それぞれのシアターにも特徴があって雰囲気が違うので、そこも面白い。
座席の前にテーブルの様な台が備え付けてある。こういうシアターは日本にはないなぁ。ビールおいたりメモとったり(暗いけど)結構便利。


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その他、フェスティバルカフェ兼アーカイブもあり、プログラムで見られなかった短編はこちらでチェック。カフェメニューには暖かいスープもあります。
カッセルはケルン以上にとても寒かったので、到着してすぐここのスープで助かった。

さて、表題の件、

ドイツに来てから、欧州の映画祭、現代美術系の映像作品等を見てきた中で、今年はプライベートな記録がテーマになった作品がよく目立っていた様に思える。映画祭では、家族をテーマとしたプログラムを立てられていることもあった。そして今回Kassel DOKでドキュメンタリー作品を多く見てきた中で、この傾向について理解する為の糸口が少し見えてきたかもしれない。

パーソナルな事柄をテーマとすること自体は、特に新しいことではなく、60,70年代のフィルムマテリアルの実験映画、70,80年代の初期のビデオアート等においても映像表現の記録性、再現性という視点で、新しいメディアとしての特性を提示する形も含み、その当時の現在が進行形で表現されることから始まっていた。

しかし、上述の傾向は、パーソナルな事柄が今現在ということに加えて、過去の個人的な記録を素材として用いることを基本的な構造としている。
映像とナレーションによるスタンダードなドキュメンタリースタイルから、視覚効果的にも実験的な表現、ナラティブ、ノンナラティブと手法は様々だけれど、制作者の幼い頃の写真やビデオ、世代によっては8mmフィルムの場合もあるが、本人と家族に関わるプライベートな記録を再構築しながら過去の記憶を蘇らせ提示するという点で共通している。

そういった作品が1、2点であれば、その作家のスタイルとして受け取るけれど、ある種の傾向として現れていることに、表現における現代性を見出せるのかなと思うと、とても興味深い。

このプライベートな記録の2次的使用による作品が注目される要因としては、「記憶」に対する価値観の変化が、起こっているんじゃないかと考える。

世の中的には、写真や映像を記録することは、とても手軽になって、「撮る」という行為が殆ど日常の極自然な振る舞いであるかの様にポピュラーになり、「見せる」ことについても、デジタル化やネットワーク技術の発達によって、個人的な記録であっても、簡単に他者に見せる若しくは 、他者が見ることが出来るといった環境が整った。

「撮る」「見せる」ということが手軽になったことによって、例えば記憶の価値みたいなものが(あるとしたら)軽くなったのかというと、そう言う訳でもない。むしろ、今までとは少し違った方向で記憶に対する価値が出て来た様に思える。

技術の進歩やメディアの移り変わりによって個人的な記憶の可視化が習慣化、一般化して行ったのと同時に、
当たり前の様になった記録する行為が、他者の記憶への好奇心をより高めているんじゃないだろうか?
そして、今現在の記録に対する意識が活性化することで、過去の記録=記憶に対する興味も深まったんじゃないかと思う。

映像メディアによって過去の記録を見ることで、他者の記憶を疑似体験できたり、それをきっかけに自分の記憶も蘇らせることもできる。
そのことが社会的に記憶を共有することと相まって、映像作品として、過去の記録を用いる、またそう言った作品が注目を集める要因となっている様に思える。

プライベートな記録であっても、不特定多数の他者に共有されることで、大衆の記憶へと昇華される。

記憶の価値の変化がもたらした映像表現による記憶の再構築は、現代アートとしての社会的機能にも通じる。

個人的には、更にこの記憶の価値をキーワードにする事で映像における媒材(フィルムマテリアル、ビデオ、データ)の扱い方についても単に先端メディアというだけではない現代性を見出せるんじゃないかと思っている。

(記憶の価値について、映像史のフィードバックや表現から考えたいので、SNSの台頭によるプライバシーの共有化の様なことにはあまり触れていません。)

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2012年11月16日

The plates in October

10月はリサーチツアーが続いたので、各地の郷土料理を頂きました。

9月のクロアチアも含めて、東欧圏の料理は、大枠では似ているけれど、それぞれ微妙に違っていて、そこが面白い。
それは、地域の文化の成り立ちや、アートなんかとも関連性があるようにさえ思える。

そして、ドイツの首都、ベルリンは流石に大きかった。
アートに限らず、ケルンよりも細かく色々と揃っていて、収穫も大きい。
地元の人達との交流も、いつもの訪問先よりも沢山できて本当にありがたかったです。
ぼくの密かな目標だった、自分の仕事でドイツに来てケンさんに会うとうのも達成できたのが嬉しい。
今後の励みになる。

写真はこちらから↓

http://flic.kr/s/aHsjCR38UB

いつもより、細かなコメント入れてます。

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2012年11月13日

London

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先週末はロンドン視察
初ロンドン、駅に到着してすぐにカッコいい街の雰囲気に当てつけられる。
なんだか、すごくキラキラして見える。初めての東京、初めてのNYと似た感覚。
今まで見て来たヨーロッパの都市とはちょっと違った、大都会に来たって感じのワクワク感がある。


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National Gallery
真っ先に見に行ったのは、Richard Hamilton The Late Works
企画展は撮影ができないので画像はなし。
というか作品を複写した何らかの画像を見たとしても全く意味を成さない、そんな絵画だった。図録を購入するもメインはテキストです。
タブローの中で入れ子式に展開される"写真による虚像"と"写実的に描かれた具像"、神聖でナラティブな様をお持ち込みつつ、1つの絵の中で、虚と実の狭間の行き来を何度も促される。
点数は少なかったけれど、写真、絵画、デジタルの加工技術、印刷技術と扱われる表現メディアも多様で複雑なので、1点毎、見るのに時間がかかる。とても興味深く、実物を見られて本当に良かった企画展だった。


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大英博物館
ロゼッタ・ストーンの本物を見る。
刻印されたヒエログリフの鮮明さと配列の美しさに驚く。
これは、そして明らかに何かを残して伝える情報伝達の為に発明されたものだよなぁと実感。

その他、古代ギリシャ、ローマなのどのレリーフも興味深かった。
レリーフでありながらも描写は繊細で、動きの表現、場面展開等は、日本の絵巻物も思い出しつつ、アニメーションや映画の歴史とリンクする。
この頃、構造物の周囲の壁面等に展開されるレリーフは、水平方向へ物理的又は、空間的な広がりを持って時間的概念が配置されている、つまり人間の歩行による視点移動を利用した、時間と空間をナラティブに表現出来るメディアであったと、映画的な解釈もできる。表現的な限界はあるものの、残されたものを見ると、メディアとしての普遍性があるよなぁと染み入る。


Tate Britain
ターナープライズの候補作家展
映像インスタレーション2人、絵画1人、パフォーマンス系1人。
映像インスタレーションは、どちらもファウンドフッテージや写真を用いたドキュメンタリー的な作品。上映作品としても堪え得る内容。というか上映の方が良い。
記憶、再構築、写真といったキーワードによって、実験映画と現代美術が再接近している点にも注目出来る。

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そして、大量にターナーを見る。ターナーもまた、ぼくが好きな絵画の1つ。
その場の空気が纏わり着くかの様に、風景画を感覚的に体験できるのが面白い。ターナーの絵に囲まれると、ある意味、映像インスタレーションよりもリアルな体験。
水彩画の小作も沢山見られて良かった。

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また、ターナーについての研究資料(色彩設計、絵の具の研究、色の分布図等)の展示も興味深い。
ターナーを模写しましょうコーナーも人が堪えなかった。

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Tate Britainは改装中らしく、展示替えの様子や、新しい展示台(?)を乾燥している所も開けっぴろげでそれもまた面白かった。

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コレクション企画は家族がテーマの写真と絵画。
ホックニーの母を描くシリーズもまた好きです。


Tate Modan
まず、特集上映のドキュメンタリーを見る。言語的にちょっと内容が難し過ぎた…
コレクションは、壮大だけれど、人も多過ぎたせいか、あまり良い印象は得られず。
これまで見て来たものを思い出しつつ、NY、パリ、ベルリン、ロンドンとそれぞれの都市の主要な美術館でのコンテンポラリーアートの見せ方の違いが面白いなぁと思う。Tateはなんだか、俗っぽく言うとcoolな見せ方。素っ気ない。プレゼンテーションに地域性が出るというのもなかなか興味深い。
ウィリアム・クラインと森山大道展、ウィリアム・クラインを大量に見るのは初めてだったので、インパクトが強かった。森山大道は、日本で見たことのある内容が多かったが、海外で改めて見ると、外国の作品(ロンドンから見て)という付加価値が加わって、少し意味が変わってくるなぁと思わされた。日本で見るのがベストな写真だと思う。


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自然史博物館
これまでになく、イージーウォッチングな博物館。展示手段が、言葉を介さなくとも視覚的に理解出来る様に上手くデザインされている。グラフィカルでポップな解説図が上手い。日本の博物館とも雰囲気がよく似ている。
好みとしては、ベルリンやウィーンの自然史博物館の様に余計なサインが無い方が良いけれど、子供向けに興味を魅いたり、観光客向けにショップへ誘導したりといった点ではよく出来ている。これも大事。

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ロンドン博物館
ここもまた、展示がかっこ良い。産業革命や二次大戦の内容が希薄なのがちょっと不思議。

National Portlat Museum
撮影NG。絵画、写真のポートレートのみの美術館。古風な美術館と思われるかもしれないが、Julian Opieがハイビジョンモニターでループアニメーションのポートレートだったりするのは流石。しっかり現代まで繋げてくれます。ポートレートによって美術史を綴って行くのも予想以上に面白い。

Film Museum of London
HPには、詳しく情報がなかった(と思う)のだけれど、2回も行ったのに展示準備でクローズだと言われる。なんだかフラれてしまった…。


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街歩き
始めにも書いたけれど、とにかくカッコいいです。カッコ良さにも深みがある。
所々、新しいビルが建っていたり、予想以上に街が綺麗(ゴミとかグラフィティが少ない)のはオリンピクゲーム招致の影響でしょうか?地下鉄の路線図なども見やすく、日本のサインデザインともよく似ていた。

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いつもの様にフリーマケーッともいくつか廻りましたが(これは制作の為の資料収集でもあるので重要)
驚く程に良い物がない…、というか良さそうな物は沢山あるのだけれど、好みの物がない…。
ドイツのフリーマーケットの様にとにかくなんでもありって訳でもなく、北欧のセカンドハンドの様にセンス良い使える日用雑貨があるって訳でもなく…、何だか結構選別されちゃってるか、すっごいどうしようもない物かって感じ、雑貨も古着も。特に古着は東京や札幌の古着屋と良く似ていました。仕入れルートが似ちゃってるのかな?ということで、この手の収穫はゼロ。


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食事は、郷土料理と定番のフィッシュアンドチップスを多能しつつ、ドイツではちょっと味わえないオサレフードを頂いて来た。パキスタンカレーがとにかく美味しかった!
カレーを除くと、味の素っ気なさ見た目なんかは、アートのクールさともちょっと通じてるかも(?)


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ロンドン、なんだか街全体から醸し出される、私達全部持ってますよ、先行ってますよ的な余裕を感じた。

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2012年11月03日

Lange Nacht

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今日はケルンのLange Nacht(長い夜)、街中の美術館、博物館、遺跡、トンネル、ギャラリー、アーティストスタジオ等々が深夜3時まで開放されているというイベント。
共通チケット制(16ユーロ、トラム乗り放題付きは17.5ユーロ)で、チケット価格は安い訳ではないですが、普段は入れない様なところもあったり、それぞれのミュージアムも通常は学割が利いたとしても5〜8ユーロくらいだと思うし、会場を繋ぐツアーバスも15分おきに回っている便利さからすると、結構お得です。

これまで欧州中、色々とリサーチに回っていましたが、ケルンのミュージアム系(沢山ある)はまだ見きれてなかったので、これを期に気になっていたところをぐるり巡って来ました。

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まずは、日本文化会館にて自作も含まれる上映企画311-What is to be remembered?に参加。
このプログラムはSVP2により昨年マレーシアの映画祭で上映されたもので、20名の映像作家よる311をテーマとしたオムニバスプログラム。
SVP2メンバーでケルン在住の映像作家中沢あきさんの働きかけにより、ケルンでの上映が実現。SVP2、あきさんに本当に感謝です。
上映と共に、同館で写真展も鑑賞。時間と場を隔てて、異国で改めてこの問題と向き合うことに、何とも言えない重みを感じざるを得ない。
そして、写真、映像ともにメディアとして表現者の立場からどう捉え伝えて行くかという意味で、SVP2の活動と海外でこのプログラムが上映されることに深く共感を覚えました。帰国後は、是非北海道でも上映させて頂きたいです。

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かなり混んでいたのでバスを避けて、トラムで次のギャラリーへ。
これまでもギャラリー巡りは殆どしていませんが、運良く映像インスタレーションの良作を見られた。良い感じ。

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散策途中にビールを振る舞う移動式バーなんかも出ています。

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続いて、徒歩移動で、応用芸術美術館へ。
ラジオとか、70年代のライフスタイルにおける未来観がとても面白かった。
Joe ColomboのTotal Furnishing Unitのプレゼン映像なんかは、SF×(かける)実験映画みたいでカッコ良すぎる。

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お次ぎは、普段は見られない遺跡発掘現場の見学。ガイド付き(独語)です。
ケルンのDom(大聖堂)周辺は、結構工事中の穴ボコだらけでなんですが、これはローマ時代の遺跡が街の中でいくつも見つかるからなのです。外見は普通の工事現場とあまり変わらないので景観的には、微妙なところも多いのですが、実際に発掘現場に入ってみると時間を飛び越えて不思議な感覚です。

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大聖堂のライトアップはいつ、どこから見ても綺麗。

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続きまして、ホームタウン・ケルンで未だ訪れていなかった歴史博物館。
Domの建築過程、2次大戦後の街の状況などケルンの歴史に触れる。
昔のKioskとか魚用の食器、ライン川の木材運搬模型等も面白い。
そして、展示室が人でみっちりしている中、歴史博物館とは何と〜も言い難いロックライブ(ミスマッチという意味で)が始まる。
でも、すんごい盛り上がり(笑)みんなこれを待っていたのか。

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各会場、入り口付近では、ビール、ソーセージ、ポメス等が売っているのもお決まり。
ドイツでは、デフォルトのセットです。もちろんビールは頂いちゃいます!

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便利なツアーバスに乗り込み、気になるカーニバル博物館へ。
ケルンで毎年2月に伝統的なカーニバルが開催されます。以前お迎えのイザさん宅(家具をお借りしている弁護士さん)にてそのお祭り映像を見せてもらっていて、特におじ様達の本気の仮装への意気込みに興味心身なのでした。

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これまた興味深い文化です。うーん、実際に見れずに帰国が惜しい…。

その後、ライン川の地下を通るラインエナジー(電気かな?)のトンネル見学に向うも、とんでもない長蛇の列(しかも外)だったので断念。

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そしてケルン名物の1つにもなっている、チョコレート博物館へ。
カカオのことや、ヨーロッパにおけるチョコレートの歴史を細かく展示しています。
ぼくは、とりわけチョコレートのパッケージ、昔の自動チョコ販売機に興味津々。
チョコとクマも昔から良いコンビネーション。

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深夜にチョコの試食で、wake up!

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1階のバーでは、軽快にダンスをしています。

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最後は、チョコレート博物館とも近いKHMにて、学生、関連アーティスト等の写真展、ビデオアート展、シアターにてアニメーション、実験映像の作品の鑑賞。
自家現像のWSで一緒だったEvamaria(パフォーマンスアーティスト)の映像作品が非常に興味深かった。

と、この時点で、深夜2時半を過ぎる。トラムで帰宅。
充実の長い夜だったけど、結構ヘトヘト。
3時以降は幾つかの会場が、ダンスパーティ、音楽ライブと化すのだそうです…。

どの会場も本当に良く混んでいて、家族、友達、カップル、みんなで楽しんでいます。
スタッフ人達も基本的にみんな笑顔で楽しそう。
これから始まるドイツの長くて寒い夜を、なんとかクリスマスが来るまで乗り切って行こう!って景気漬けみたいな感じもあるのかな?
とにかく、大人が生活を楽しむ為に文化イベントへ参加するエネルギーには脱帽するのでした。
posted by ani at 08:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2012年10月01日

Zagreb 25FPS

ヨーロッパにおいては、実験映画に限定した国際映画祭としては、最も存在感のある映画祭の1つ。
ケルンにおいても知り合った同業の映像作家達はこぞって、この映画祭を勧めていた。
渡独当初から、この映画祭にはしっかりリサーチに行こうと予定していたのだけれど、幸運にも佐竹の作品が、審査員の特集プログラムで上映されることとなったので、作家関係者のアクレディテイションで参加することができた。ラッキーでした。

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フリーパス、カタログ、トートバックが頂けます。カタログは充実の内容。
布製のトートバッグ(今はエコバッグとも言うのかな)は、結構色んな映画祭でノベルティとして扱われています。ドカンとロゴが入っていて映画祭期間中に関係者が持っていると良い宣伝にもなる。
開催中は、財布にチケットにメモ帳にパンフレット、フライヤー等、バラバラとした小物を持ち歩くことにななるのでとても便利なのです。

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ザグレブへは、またまた便利なケルン・ボン空港(ぼく等の家からは電車一本25分で着く)から、格安航空で。今回はミュンヘンで乗り継ぎでしたが待ち時間も殆どなく楽々です。

空港へは、ドライバーがお向えに来てくれています。スプリト同様、空港から市街地へは比較的近く車で30分程度。ホテルまで送ってもらい、すぐに会場へ向います。

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会場は、大学施設の一部(?)の様な所でしたが、聞く所によるとザグレブには大学としての校舎は無く、市内各所にある講義の出来る施設で授業等が行われているのだそうです。
会場もその役割を担う一施設。学食の様な大きな食堂もあって、映画祭への来客に限らず若者が多い敷地でした。

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日本とは全く様相の異なる告知看板。ビルボードとも言い難いこの形体は、次々と上に貼り重ねられて行きます。結構好き方です。ヨーロッパでは良く見かけますが、古い告知の上に破ったり破らなかったりで貼り重ねていく光景に身近に触れるとネオダダやPOPのコラージュ・貼り込み系のアーティストの源流もなんとなく感じるとることができる。

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会場入り口にドーンと張り付けられたタイムテーブルも良い。

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到着日は早速佐竹の上映でした。
25FPSの面白いところはJuly(審査員)の特集プログラムが組まれることです。
インターナショナルコンペに対して3人のJulyが就きますが、その3人それぞれがコンペとは無関係に独自にキュレーションしてきた作品を上映します。
佐竹作品は、Juryの1人Sergio FantさんのプログラムHome moviesにセレクションされたのでした。
これもまた、とても良いシステム。その年のJulyがどういった視点で作品を見ているか、またどの様な人物(その年によって作家やデストリビューター、評論家等様々)が携わっているかについては、映画祭の特徴を知る上で興味深いところだし、その方々のプレゼンによってパーソナリティーや作家性(Juryが作家の場合も多い)も明確に認識することが出来る。Juryにとっては責任重大でプレッシャーも大きいと思うけれど、映画祭として、特に25FPSの様に表現分野に焦点を絞った企画においては、掲げる主義主張をアピールする点においても意義深い。

コンペプログラムでは、流石に純・実験映画が出揃う。ぼくとしては自家現像系フィルム作品の動向が気になってるところですが、コンペインしている作品は、オリジナルフォーマットでのフィルム作品、フィルムマテリアルを素材としてデジタル変換している作品、またデジタルによるアブストラクトな作品、実写ノンナラティブと並列的に選出されている印象を受ける、しかも絶妙なバランスで。
フィルムマテリアルの作品につては現在、商業的な面での制作、流通の縮小化よって、表現メディアとしての存続維持が世界中(特に実験映像作家の間で)で問題視されている。
そんな状況下において、新旧のメディアの現状を作品を通して客観性を持って提示する上でも映画祭の存在は大きい。

個人的には、例えば希少性に付加価値がついたり、ノスタルジックな要素としてフィルムを扱う様なことは、あまり好ましくない。イメージメイキングという観点では、まだまだ面白いことが出来ると思っているし、映画の歴史においては、今の様な全くタイプの違う旧メディアと新メディアが混在している状況も初めてのこと。作家としてはこの状況を楽しみたいとも考えている。フィルムについては残したいって言う気持ちよりも、やっぱりミックスした形でまた新たな展開に持って行きたいという立場。(フィルムマテリアルの表現についてはまた別の機会で触れておきたい)25FPSでは、そんなことをプログラムを見ながら色々と再認識されてくれる映画祭だった。
そして次回は必ず応募しなければ!

以下、チャート式レポ

<上映会場>
噂には聞いていたが、とてつもなく大きなスクリーンで、上映も全てオリジナルフォーマット、
35mmもデジタルも、16mmも全て綺麗に完璧なコンディションでの上映、実験映画を存分に体感出来る。

<会場の様子>
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会場の裏

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シアターのエントランス、奥の方で座ったりもできます。

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上映が終わると、かなり遅い11時から12時くらい。

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上映後は、会場裏のカフェにみんな集まります。

<コンペプログラム>
各プログラムの始めにレトロスペクティブとして往年の実験映画の名作が1本上映される。
コンペ作品は8プログラム32作品。短編に限らず60分近い長尺の作品も含まれる。
アブストラクトの作品で、デジタル、フィルム、フィルムマテリアルデジタル変換、それぞれの粒子のイメージをスクリーン上で比較出来たのは面白かった。

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上映で見られなかった分はアーカイブで鑑賞。ノートPCだけど、アーカイブ用のムービーファイルもクオリティ管理がしっかりされている。

<特集:クロアチアの作家選抜>
実写、手描き共にアニメーション作品のクオリティが高い。

<特集:Mediterranean Phosphorescences 60 Years of Cine Club Split(地中海の燐光シネクラブスプリトの60年)>
スプリトの独立映像団Cine Club Splitによる、過去60年の映像作家によるクロアチア、スプリトを映し出した短編作品を集めたプログラム。日本で言う所の小型映画的な存在の作品群。
異国の歴史を、個人作家の作品を通じて振り返るのも面白い。
おじいさんが立ち上げた組織を引き継いだという女性オーガナイザーによるプレゼン。
スプリトとザクレブ、クロアチアにおけるローカルな映像シーンの連携が見られたのも良かった。

<特集:The Holy Mountain>
クロアチアの実験映画祭でこれを見ることになるとは…、
力技の異文化リ・ミックスは、巨大なスクリーンと合間って、どこに居るのかも分からない様な感覚に陥る。

<Expanded Cinema>
パフォーマンスライブは4つあったが、滞在中に見られたのは1つ。
Aberration of Light: Dark Chamber Disclosure
Sandra Gibson, Luis Recoder, Olivia Block(USA)
35mmプロジェクターを2台用いた、スクリーニングライブ。サウンドもライブ演奏。
映画機構を活用したライブパフォーマンスは、映画産業に起こる変革と呼応するかの様に、映画祭に限らず、メディアアート、現代美術においても上演機会がムーブメント化されている印象を受ける。
このパフォーマンスは映写室からの投影でしたが、プロジェクターの後ろ又は映写レンズの前等で色々操作しながら、ライブでイメージ構築して行くスタイルは、映画発明前史への先祖帰りの様にも見えて面白い。
どこかの映画祭で、Expanded Cinemaのレトロスペクティブ(遡りすぎるとホントはexpandedじゃないけど、、)なんかもやらないかなぁ、影絵、マジックランタン、風呂、テアトル・オプティーク、上演を生で見たい。


ザグレブについて

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クロアチアの首都となりますが、これまで訪れたドイツやヨーロッパの都市とはずいぶんと雰囲気が違いました。
首都として大きな街ではあるけれど、近代的な建築が並ぶ都市部でも人口が少ないせいかどことなく寂しげです。
ヨーロッパ的な古い街並、近代的な建物が混在しているところも他のヨーロッパの都市と似た様な感じですが、やっぱり雰囲気が少し変わっています。街に誰も居ないんじゃないかみたいな瞬間があったり、、、
不思議だけれど、こういう雰囲気も嫌いじゃないです。

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繁華街なんかは観光客も多いし活気がない訳ではない。でも人でごちゃごちゃしている感じはない。

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観光名所は、どこもとても綺麗です。
街自体もゴミが散らかっていたりということは殆どなくきれいです。

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食事は、スプリト同様にシーフードも食べられます。
ディナーは1度レストランに行ってみました。地元の魚とイカスミのニョッキ。なかなか美味しかった。
ビールもワインも安くて美味しいです。

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美術館は、市内で一番新しいとされるMuseum of Comtemprary Art Zagerb。
常設でクロアチアのアーティストの作品をテーマ毎に見られたのが興味深かった。

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身体表現、ポリティカルな作品が目立ちましたが、写真や建築、グラフィックデザインに関わる様な平面作品、キネティックアートのオブジェなどが結構面白い。
絵画は、それ程多くはない。
地元のビデオアートや映像作品も他の美術表現と並んでコレクション展時しているところから映像アートシーンの地盤を垣間見る。

クロアチアのアート、ノーチェックでしたがなかなか興味深いです。
そしてこの美術館の建築も面白かった。

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滑り台で遊べます。子供達が滑り台目当てに美術館へ遊びにきていたりします。


いつもはその他博物館なんかを見て回りますが、今回はザグレブの近くに世界遺産の自然公園があるので、映画祭終了後に1日滞在を延ばして行ってみました。
プリトヴィッチェ湖群自然公園。

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ザグレブからは、高速バスに乗り2時間ほどで着きます。
自然歩きが好きなドイツ人観光客(おじさま、おばさま)が非常に多いです。
驚く程の透明な水、大小様々な湖とその色、そして無数の滝、4時間程かけて、高低差もそこそこある森の中の散策路を歩き回ってきました。

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とても素晴らしい景色と新鮮な空気に前日までの実験映画で疲れた目、耳もずいぶんと癒された。映画祭に加えて、こんな自然観光ができるというのも何だかとても得をした気分になります。
公園なの記録はこちらにて↓
http://www.facebook.com/media/set/?set=a.364269513658327.89032.100002258443318&type=1&l=c0dfe029cc


スプリトに引き続き、ザグレブ25FPSも非常に興味深く、ぼくにとっては専門分野でもあるので、大変良い参考になりました。
そして、今まではあまり注目していなかったクロアチアですが、良い映画祭があり、地域間の連携もあったり、ローカルのアートシーンも独特だったり、大自然を満喫することも出来たりと、とても魅力的なところでした。

今後も25FPSやSplit Film Festivalは勿論、クロアチアの作家にも注目していきたいと思う。

posted by ani at 08:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記