ケルンにおいても知り合った同業の映像作家達はこぞって、この映画祭を勧めていた。
渡独当初から、この映画祭にはしっかりリサーチに行こうと予定していたのだけれど、幸運にも佐竹の作品が、審査員の特集プログラムで上映されることとなったので、作家関係者のアクレディテイションで参加することができた。ラッキーでした。
フリーパス、カタログ、トートバックが頂けます。カタログは充実の内容。
布製のトートバッグ(今はエコバッグとも言うのかな)は、結構色んな映画祭でノベルティとして扱われています。ドカンとロゴが入っていて映画祭期間中に関係者が持っていると良い宣伝にもなる。
開催中は、財布にチケットにメモ帳にパンフレット、フライヤー等、バラバラとした小物を持ち歩くことにななるのでとても便利なのです。

ザグレブへは、またまた便利なケルン・ボン空港(ぼく等の家からは電車一本25分で着く)から、格安航空で。今回はミュンヘンで乗り継ぎでしたが待ち時間も殆どなく楽々です。
空港へは、ドライバーがお向えに来てくれています。スプリト同様、空港から市街地へは比較的近く車で30分程度。ホテルまで送ってもらい、すぐに会場へ向います。



会場は、大学施設の一部(?)の様な所でしたが、聞く所によるとザグレブには大学としての校舎は無く、市内各所にある講義の出来る施設で授業等が行われているのだそうです。
会場もその役割を担う一施設。学食の様な大きな食堂もあって、映画祭への来客に限らず若者が多い敷地でした。

日本とは全く様相の異なる告知看板。ビルボードとも言い難いこの形体は、次々と上に貼り重ねられて行きます。結構好き方です。ヨーロッパでは良く見かけますが、古い告知の上に破ったり破らなかったりで貼り重ねていく光景に身近に触れるとネオダダやPOPのコラージュ・貼り込み系のアーティストの源流もなんとなく感じるとることができる。

会場入り口にドーンと張り付けられたタイムテーブルも良い。

到着日は早速佐竹の上映でした。
25FPSの面白いところはJuly(審査員)の特集プログラムが組まれることです。
インターナショナルコンペに対して3人のJulyが就きますが、その3人それぞれがコンペとは無関係に独自にキュレーションしてきた作品を上映します。
佐竹作品は、Juryの1人Sergio FantさんのプログラムHome moviesにセレクションされたのでした。
これもまた、とても良いシステム。その年のJulyがどういった視点で作品を見ているか、またどの様な人物(その年によって作家やデストリビューター、評論家等様々)が携わっているかについては、映画祭の特徴を知る上で興味深いところだし、その方々のプレゼンによってパーソナリティーや作家性(Juryが作家の場合も多い)も明確に認識することが出来る。Juryにとっては責任重大でプレッシャーも大きいと思うけれど、映画祭として、特に25FPSの様に表現分野に焦点を絞った企画においては、掲げる主義主張をアピールする点においても意義深い。
コンペプログラムでは、流石に純・実験映画が出揃う。ぼくとしては自家現像系フィルム作品の動向が気になってるところですが、コンペインしている作品は、オリジナルフォーマットでのフィルム作品、フィルムマテリアルを素材としてデジタル変換している作品、またデジタルによるアブストラクトな作品、実写ノンナラティブと並列的に選出されている印象を受ける、しかも絶妙なバランスで。
フィルムマテリアルの作品につては現在、商業的な面での制作、流通の縮小化よって、表現メディアとしての存続維持が世界中(特に実験映像作家の間で)で問題視されている。
そんな状況下において、新旧のメディアの現状を作品を通して客観性を持って提示する上でも映画祭の存在は大きい。
個人的には、例えば希少性に付加価値がついたり、ノスタルジックな要素としてフィルムを扱う様なことは、あまり好ましくない。イメージメイキングという観点では、まだまだ面白いことが出来ると思っているし、映画の歴史においては、今の様な全くタイプの違う旧メディアと新メディアが混在している状況も初めてのこと。作家としてはこの状況を楽しみたいとも考えている。フィルムについては残したいって言う気持ちよりも、やっぱりミックスした形でまた新たな展開に持って行きたいという立場。(フィルムマテリアルの表現についてはまた別の機会で触れておきたい)25FPSでは、そんなことをプログラムを見ながら色々と再認識されてくれる映画祭だった。
そして次回は必ず応募しなければ!
以下、チャート式レポ
<上映会場>
噂には聞いていたが、とてつもなく大きなスクリーンで、上映も全てオリジナルフォーマット、
35mmもデジタルも、16mmも全て綺麗に完璧なコンディションでの上映、実験映画を存分に体感出来る。
<会場の様子>

会場の裏

シアターのエントランス、奥の方で座ったりもできます。



上映が終わると、かなり遅い11時から12時くらい。

上映後は、会場裏のカフェにみんな集まります。
<コンペプログラム>
各プログラムの始めにレトロスペクティブとして往年の実験映画の名作が1本上映される。
コンペ作品は8プログラム32作品。短編に限らず60分近い長尺の作品も含まれる。
アブストラクトの作品で、デジタル、フィルム、フィルムマテリアルデジタル変換、それぞれの粒子のイメージをスクリーン上で比較出来たのは面白かった。

上映で見られなかった分はアーカイブで鑑賞。ノートPCだけど、アーカイブ用のムービーファイルもクオリティ管理がしっかりされている。
<特集:クロアチアの作家選抜>
実写、手描き共にアニメーション作品のクオリティが高い。
<特集:Mediterranean Phosphorescences 60 Years of Cine Club Split(地中海の燐光シネクラブスプリトの60年)>
スプリトの独立映像団Cine Club Splitによる、過去60年の映像作家によるクロアチア、スプリトを映し出した短編作品を集めたプログラム。日本で言う所の小型映画的な存在の作品群。
異国の歴史を、個人作家の作品を通じて振り返るのも面白い。
おじいさんが立ち上げた組織を引き継いだという女性オーガナイザーによるプレゼン。
スプリトとザクレブ、クロアチアにおけるローカルな映像シーンの連携が見られたのも良かった。
<特集:The Holy Mountain>
クロアチアの実験映画祭でこれを見ることになるとは…、
力技の異文化リ・ミックスは、巨大なスクリーンと合間って、どこに居るのかも分からない様な感覚に陥る。
<Expanded Cinema>
パフォーマンスライブは4つあったが、滞在中に見られたのは1つ。
Aberration of Light: Dark Chamber Disclosure
Sandra Gibson, Luis Recoder, Olivia Block(USA)
35mmプロジェクターを2台用いた、スクリーニングライブ。サウンドもライブ演奏。
映画機構を活用したライブパフォーマンスは、映画産業に起こる変革と呼応するかの様に、映画祭に限らず、メディアアート、現代美術においても上演機会がムーブメント化されている印象を受ける。
このパフォーマンスは映写室からの投影でしたが、プロジェクターの後ろ又は映写レンズの前等で色々操作しながら、ライブでイメージ構築して行くスタイルは、映画発明前史への先祖帰りの様にも見えて面白い。
どこかの映画祭で、Expanded Cinemaのレトロスペクティブ(遡りすぎるとホントはexpandedじゃないけど、、)なんかもやらないかなぁ、影絵、マジックランタン、風呂、テアトル・オプティーク、上演を生で見たい。
ザグレブについて





クロアチアの首都となりますが、これまで訪れたドイツやヨーロッパの都市とはずいぶんと雰囲気が違いました。
首都として大きな街ではあるけれど、近代的な建築が並ぶ都市部でも人口が少ないせいかどことなく寂しげです。
ヨーロッパ的な古い街並、近代的な建物が混在しているところも他のヨーロッパの都市と似た様な感じですが、やっぱり雰囲気が少し変わっています。街に誰も居ないんじゃないかみたいな瞬間があったり、、、
不思議だけれど、こういう雰囲気も嫌いじゃないです。




繁華街なんかは観光客も多いし活気がない訳ではない。でも人でごちゃごちゃしている感じはない。

観光名所は、どこもとても綺麗です。
街自体もゴミが散らかっていたりということは殆どなくきれいです。


食事は、スプリト同様にシーフードも食べられます。
ディナーは1度レストランに行ってみました。地元の魚とイカスミのニョッキ。なかなか美味しかった。
ビールもワインも安くて美味しいです。





美術館は、市内で一番新しいとされるMuseum of Comtemprary Art Zagerb。
常設でクロアチアのアーティストの作品をテーマ毎に見られたのが興味深かった。






身体表現、ポリティカルな作品が目立ちましたが、写真や建築、グラフィックデザインに関わる様な平面作品、キネティックアートのオブジェなどが結構面白い。
絵画は、それ程多くはない。
地元のビデオアートや映像作品も他の美術表現と並んでコレクション展時しているところから映像アートシーンの地盤を垣間見る。
クロアチアのアート、ノーチェックでしたがなかなか興味深いです。
そしてこの美術館の建築も面白かった。


滑り台で遊べます。子供達が滑り台目当てに美術館へ遊びにきていたりします。
いつもはその他博物館なんかを見て回りますが、今回はザグレブの近くに世界遺産の自然公園があるので、映画祭終了後に1日滞在を延ばして行ってみました。
プリトヴィッチェ湖群自然公園。


ザグレブからは、高速バスに乗り2時間ほどで着きます。
自然歩きが好きなドイツ人観光客(おじさま、おばさま)が非常に多いです。
驚く程の透明な水、大小様々な湖とその色、そして無数の滝、4時間程かけて、高低差もそこそこある森の中の散策路を歩き回ってきました。



とても素晴らしい景色と新鮮な空気に前日までの実験映画で疲れた目、耳もずいぶんと癒された。映画祭に加えて、こんな自然観光ができるというのも何だかとても得をした気分になります。
公園なの記録はこちらにて↓
http://www.facebook.com/media/set/?set=a.364269513658327.89032.100002258443318&type=1&l=c0dfe029cc
スプリトに引き続き、ザグレブ25FPSも非常に興味深く、ぼくにとっては専門分野でもあるので、大変良い参考になりました。
そして、今まではあまり注目していなかったクロアチアですが、良い映画祭があり、地域間の連携もあったり、ローカルのアートシーンも独特だったり、大自然を満喫することも出来たりと、とても魅力的なところでした。
今後も25FPSやSplit Film Festivalは勿論、クロアチアの作家にも注目していきたいと思う。