4/28〜5/1



ドイツ入りしてから丁度1週間目、オーバーハウゼン国際短編映画祭へ。
2年前、佐竹のコンペインで初めて参加。作品の上映のみならず、映画祭のシステムやゲストに向けてのホスピタリティの高さに感銘し、映画の味わい方、上映の在り方、フェスティバルを通じての出会いなど、映像作家として、改めて作品の外の世界、アウトプットした後の周縁との関わりについて考えさせられた映画祭でした。無論、今回の渡独、ケルン滞在の切っ掛けの1つにもなっています。
このドイツ滞在中には、作品制作と共に、出来るだけ多くの映画祭や映像アート系の企画をリサーチに回りたいと思っていて、その初回がオーバーハウゼンとなります。
ケルンからは、鉄道で約1時間弱。オーバーハウゼン自体は非常に小さな田舎町という感じだけれど、ケルンや国際空港のあるデュッセルドルフからのアクセスも良く、映画祭には欧州圏のディストリビューターや映画関係者が数多く集います。年間80程も映画祭が開催されると言われるドイツにおいては、その年の短編映画の国内外の傾向を占う主要な老舗映画祭という位置付けにもなっているようです。そう言えば昨年のオスナブリュック(EMAF)でも見かけた方々がチラホラと居たなぁ。LightConeのクリストフともまたまた再会しました。
会場は、オーバーハウゼン中央駅から徒歩5分で着く映画館とその周辺。メインのスクリーンでは、主にジャーマンコンペとインターナショナルコンペの作品が上映され、その他3つのスクリーンで、特集やマーケット、キンダー、ミュージックビデオ等のプログラムが上映されます。

各コンペプログラムの後には、映画館の向えのサロンスペースで作家とプログラムディレクターによるトークディスカッションが催されます。
インターナショナルコンペは英語がメインですが、世界各国から参加する映画監督、映像作家には英語が不得意な場合、専門の通訳がつきます。また独語メインのジャーマンコンペについては、英語への同時通訳がついいたりもします。質疑応答も盛んで、作り手、受け手どちらにとっても平等でオープンな機会となっています。トークは毎回みっちり2時間くらいはやっているので、その間重なっているプログラムは見られないというのがちょっと難点。今回は滞在期間も短いので上映重視にしました。
鑑賞プログラム
4/28:German Competition 1、International Competition 3、Reality Rediscovered(日本の60年代特集)
4/29:Vera Neubauer Film for children、Market Screening Beirut DC、International Competition 5、Linda Christall 1
4/30:Market Screening Electronic Arts Intermix、International Competition 7、Market Screening Video Data Bank、Open Screening
5/1:International Competition 9
12プログラム全90本鑑賞。3泊4日結構詰め込めたと思います。
オーバーハウゼンの特徴としては、映画のジャンルに垣根が無く、コンペプログラムでは、ドキュメンタリーもアニメーションもドラマもエクスペリメンタルもミックスされた状態でプログラミングされています。色々な見方ができると思いますが、例えばぼくの場合、他ジャンルとの比較をしながら実験映画の現状について俯瞰的に見られるという点でも良いのかなと思いました。また、今回はマーケットスクリーニングも意識的に見ましたが、それに関しては基本的には実験系、アート系のディストリビューションによるものが多いという印象です。
見たプログラム(全体の約1/5)を通じて感じたのは、コンペではエクスペリメンタルが少なかった印象。また劇モノも少なかった。ドラマなのかドキュメンタリーなのか、実験なのかドキュメンタリーなのか…等、どちらとも取り難い作品が傾向的に強かった様に思います。映画の表現ジャンルのボーダーレス化については、歓迎だし、興味のあるところ。しかしながら、何ともしっくりこないというか魅かれる作品があまりないのが気になりました。
言語的な面でついて行けていない所為も多少はありますが、、、
(かなり主観的な見方と感想。)
手法(見せ方)的には、マルチスクリーンや多重映像の作品がかなり目につきました。いくつかの理由が考えらますが、別時間別空間の並列的表現がアスペクト16:9、HD化によって1画面でレイアウトしやすくなったことが大きな要因の1つではないかと予測します。
でも、残念ながら新しさを感じるものは無く、何だかスカイプ画面やプレゼンテーションを淡々と見せられているようで辛いなぁというものもありました。複数画面での表現についてはシングルチャンネルのビデオインスタレーションでも既に展開済みであったり、イメージ構成的な要素としてはモーショングラフィックやVJ等でも一般化してしまった見せ方とも言えます。短編とは言え映画作品(劇場での上映という意味での)として成立させることへの意識がそれ程強くないのかなぁとも思いました。今年の傾向?若しくは、日常的にもかなり浸透したインタラクティブなモニタ画面の影響だったりするのでしょうか?映画を見せる場について考えさせられます。
もう1つ気になったのは、長回し。HDもスタンダードになりつつある中、みんながminiDVで作っていたころより画質が向上したことは明らかだし、実写の場合はスチルの様な画作りをする作品も少なくない。その影響もあってかフィックス、ロング、長回しの多用、若しくはそれだけというのが多いなぁと気になりました。これについても、劇場空間での上映作品という点では、う〜ん、どうだろう?と考えてしまった。それがもし、画質が向上したことによる肉眼視的なリアリティの追求みなたいなことだとしたら、映画としては少しネガティブな方向性ではないかと思います。
上記2つの傾向も含め全体的に、何となく物足りなさが残ってしまった理由としては、個人的には、編集における表現意識が随分と希薄な印象を受けたからではないかと考えています。
モンタージュの面白さで見せるといった作品が殆どなかったし、良い意味で期待を裏切られるといったこともありませんでした。これについてはオーバーハウゼンが実験映画に限らずオールジャンルの映画祭だからこそ、より気になった点でもあります。「高細密な画質や画面構築」>「編集による時間的、空間的構築」これが、ナラティブにしろノンナラティブにしろ短編系映画に傾向的なことなのかどうか?は、他の映画祭でも検証してみたいところです。
そんな中、モンタージュという視点で非常に興味深かったのは、マティアス・ミュラーのファウンドフッテージ「Meteor」(2011)と特集上映Reality Rediscoveredでの松本俊夫「つぶれかかった右目の為に」(1968)。この2作に共通するのは、既存する映像素材を取り扱う「編集」に特化した作品であるということ。どちらともその圧倒的な情報量が、上記の傾向が見られた作品群の中、非常に新鮮でした。マティアスの「Meteor」は、様々な映画から抽出したカットをナラティブに再構成した作品。宇宙、流星、少年をアイコン、誰もが経験したことのある幼少期の妄想を想起させられる様な展開は、実験の枠を超えて普遍的な”ある映画”として転換されている。ちょっとズルいなぁとも思わされた。規則的なタイミングでのモンタージュとナレーションのリズム感によって自然と少年時代の回想へと誘われる感覚の映画。技術的には、60年代SF映画の材質感を統一し35mmにフィックスされていた点にも注目したい。
「つぶれかかった右目の為に」は言わずもがな制作当時は最先端であったマルチ映写による作品。ぼくは今回初めてこの作品を見たのだけれど、インスタレーションやライブパフォーマンスを意識した作品と認識していたので、劇場での上映形式ではどう感じるのかにも興味があった。実際には大量の映像を浴びる様な視覚体験としてとても面白かった。もう少しスクリーンに近づいて見れば良かったと後悔。
左右並んだ映像の上からさらにその2つをジョイントするかの様にもう1つの映像が重なる構造。当時のニュース映像(と思われる)フッテージを中心にグラフィカルな素材も交えて目紛しくモンタージュを繰り返す。表現メディアは違うけれど、同時期のラウシェンバーグのシルクスクリーン作品との共通性を感じて、その点でも興味深かった。
ということで、コラージュ系の作家としてはザ・モンタージュなこの2点を見られただけでも充分満足なのでした。
その他、フォトレポで紹介。



フェスティバルカフェは、2年前の場所とは変わっていて、芝生もある公園のようなところ。
プログラムの合間や夜に食べたり、飲んだり、話したり、無料のWiFiも完備でとても便利です。
メイン会場からは、徒歩で7,8分くらい。

劇場、カフェ、事務局等、各会場をつなぐサインは蛍光グリーンのニットで色んなところを覆っています。

こういうこと。

こういうこと。
面白い、けど作業は大変そうだ。

フェスティバルカフェ横の、巨大ショッピングモールの駐車場では、土日にマーケットが立っていました。
2年前は、劇場そばの商店街でやっていたなぁ。
マーケットがあれば、もちろん寄ります。

犬の餌の専門点。この"珍"列は面白い。

本当に小さな田舎町なので、会場を行き来していれば、必ず知り合いとも出くわします。
ヤンさんもいつもカメラ携帯。

フェスティバルカフェ敷地内の別の小屋。こちらは飲み物専用と夜の会場だったのかな?
今回は体力温存の為、夜にカフェで過ごすのは控えたのです。

再び、カフェ。いつもの親子家族経営。







食事はざっとこんな感じ。
自分では作らないタイプのメニューばかりなので、楽しんで食べられます。



主に午前中にセッティングされているキンダープログラム。結構人も入っています。
驚いたのは、上映後の質疑応答で小学校前の子供達が、自らマイクを持って盛んに質問をしていたこと。
作家さんもノリノリで、次から次に素材を取り出し説明をしてくれます。
これは子供達にとってとても良い体験。

ぼくは、今回オーバーハウゼンに行ったもう1つの目的は、自作のプレゼンテーション。
Open Screeningというプログラムで、インターナショナルコンペティションで選外となった作品について、
作家自身がプレゼンすると言う条件の元上映されるというものです。
申し込みについては、指定された日時からメールでの先着順ということなので、かなりの運任せ。上映されたのは非常にラッキーでした。
このシステムは作家にとって、とても貴重で良い機会だと思います。
上映時間帯としてはコンペプログラムとも重なっていたのですが、観客もかなり多く。選外作品を敢えて見るという需要も高い様です。
10点程の作品の中、殆どがドラマでエクスペリメンタルはぼくだけでした。

ということで、オーバーハウゼン国際短編映画祭、2度目の参加でしたが、渡独後最初の映画祭としても非常に良い体験ができました。
また、次の映画祭の映画祭も楽しみ。滞在中何件回れるかな?