2011年05月04日

EMAFレポ2

4月28日
EMAF初日。ここから3日間は、映画とメディアアート漬け。あと合間にちょっと観光。
EMAFは、オスナブリュックの市内10カ所程に上映会場、展示会場、ライブ会場、ライブラリー、ワークショップ会場、パーティ会場等が設置されている。
どの会場もメインの劇場から徒歩10分圏内の距離で、上映の合間に展示やライブを見るというのも比較的しやすい。といっても上映自体は数会場でパラレルで動いているので、全てを網羅するのは難しいのだけど。その為に、ライブラリーでいつでも出品作品が見られる仕組みになっている。


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LAGERHALLEという、普段はライブや演劇等の会場にもなる、市内の文化発信拠点的な劇場がメインの会場。カフェバーも併設されていて、飲食もしやすい。映画を見る時でも、でっかいジョッキを片手にシアター内に入って来る人が結構多い。ありですよねー。
その他は、市内の美術館や、協会をイベント施設にリノベーションしたホール、ミニシアター、図書館、カフェ、野外などが会場となっている。
例えば札幌で言うと、狸小路を中心に南北はススキノ交差点〜大通り公園くらいまでの範囲に収まる感じかな。もちろん参加作家の宿もメイン会場の近くに用意されている。

上映プログラムは、午後から夜11時くらいまでの時間帯で組まれているので、
午前中はゆっくりと過ごせる。朝食後にメイン会場のカフェに居ると、帰国直前のクワクボさんと遭遇。またご挨拶程度だったけれど、少しお話ができる。この後、クワクボさんの作品も見に行くので楽しみも増す。
この日は、16時半からのプログラムを見る前に、少し街中を散策とメディアアートの展示を見に行く。


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商店街や飲食店が集まる街の中心に会場があるので、観光も気軽に楽しめる。
街並は、なんだか可愛らしく統一感がある。のどかな感じで過ごしやす印象。
ドイツの中では大都市ではないけれど、それ程田舎という訳でもない。街の中心に大学があり若者も多い。ギャラリーもいくつも見受けられたし、現代的な建築の美術館等もあり文化的な楽しみも充分。

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ランチは、去年も食べて気に入ったニシンのオイル酢漬けのサンドとイモとスモークサーモンにチーズクリーム入りの(?)タルタルソースみないのがっかったやつ。どちらも美味しい。というか素材は北海道と変わりないので海外の食事という抵抗感が全くないです。


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昼食後は、メディアアートの展示会場へ。
先ずは、会場自体がとても面白い。協会を展示やイベントができる施設に作り替えた建物。協会講堂本体は祭壇を除いてそのまま残っているので、そこをステンドグラスを全て遮光する形で展示空間としていた。美術館やギャラリーのホワイトキューブに比べ、石造りの重厚さと突き抜ける様に高い天井は、大写しの映像を伴うインスタレーション作品と良くフィットしていた。欧州の作品の多くは911以降の情勢における映像的なアプローチだったり、音と映像の関係だったり、ナラティブな映像のループ上映だったりと、あれ?と思うくらいオーソドックスな、"メディアアート"というよりは"ビデオアート的"なものが多かった。最近は解像度も上がったし、プロジェクターの性能も良いから見た目はどれも綺麗だしカッコいいんだけど、内容は…むーん…って感じ。
その中で一際、先鋭的だったのがクワクボリョウタさんの作品「THE TENTH SENTIMENT」だった。使用しているのは、鉄道模型、様々な日用雑貨、LED電球。映像機材等は一切使用していない。協会講堂内とは別にセッティングされた暗転の展示室に入ると、静かに流れる光と影の像が、部屋の壁、床に映し出されている。よくみると、5×5mくらいの展示室の床一面に鉄道模型の線路が張り巡らされ、その線路の周りは通常の鉄道模型のジオラマではなく、洗濯バサミや鉛筆、金網のクズ籠、コンパクトデジカメ用の携帯三脚、小さなアナログの置き時計、笊、ゴムまり等々、無数の日用雑貨が綺麗にレイアウトされている。線路を走る列車の先端にはLED電球が付いていて、列車が通り過ぎるとそれらのモノの影が壁、床に動きを伴って映し出されるという仕組みだった。映し出される動く影絵は、日用雑貨のそれぞれが、都市空間や、郊外の風景に見える様に上手くレイアウトされ、規則的に流れ、展開してゆく影絵をずーっと眺めていると、本当に車窓からの風景を眺めているかの様な感覚にトリップした。
映し出される影の形、大きさ、タイミングを実に見事にコントロール(映像的には編集)し、光と影という映像メディアの原点をフィードバックした視覚的な作品だなと思ったいた、見ていて本当に心地良いし、、、でも、くり返し見ていると、それだけじゃない様に感じてきた。
列車は、一度速いスピードで線路を一周し、その後同じコースを今度は、微速度で1つ1つのオブジェクトの影をじっくりと見せる様に進む、そのくり返し。素材となっている日用雑貨は、多分100均で買える様な物ばかり。映し出される影は、車窓から見える都市や郊外の風景を模して再現しているのだけれど、その影はどれもパターン化され大量生産された工業製品で構成されている。
始めは、普段よく見る(日本の)車窓からの風景のようで気持ちいいなぁって思っていた動く影絵も、もう少し引いた捉え方をすると、自分たちの生活している世界が、100均雑貨の様なものでリアルに再現されてている。いつの間にか規則正しく計画化された中で心地良く暮らしてしる日本の社会をある意味照らしてるのかなぁと深読みもさせられた。
言葉にすると何とも大雑把な表現で申し訳ないです。。
こういう感じ方ができるのは、もしかしたら海外で他の文化圏の作品と並んで日本の作品を見られからなのかなぁとも思った。
でも、クワクボさんのこの作品は、何か強く社会的なメッセージを発してるのではなく、メディアに対する客観的な姿勢がくっきり、さっぱりしているところが、とても好きな作品だった。
EMAFのオフィシャルサイトのトップでちょっと見られます。)


ぼくにしては、見た作品について随分書いたけど、本当に興味深かったのです。このあとPipさんの「Free Radicals」と他2プログラムの映画を見たのだけれど、とりあえず今日の報告はここまで。

一昨日(5/2)の夜に帰ってきて、今日はまた始発便(5/4)で東京、イメージフォーラム等を見に行ています。
続きのEMAFレポは随時更新。



posted by ani at 04:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記